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てんでんこ 皇室と震災・第2部16

 泉田裕彦(いずみだひろひこ)さん(54)が新潟県知事に当時全国最年少の42歳で就任したのは、中越地震発生翌々日の2004年10月25日だった。

 11月6日には天皇、皇后両陛下を新潟空港で迎え、当時の山古志(やまこし)村長・長島忠美(ながしまただよし)さん(66)とともに自衛隊ヘリに同乗した。「皇太子さま(当時44歳)より若い知事として、両陛下にはご認識いただきました」

 上空から、河川の土手などにブルーシートが見えた。「なぜ地面に敷いてあるのですか」と天皇陛下が尋ねたので、泉田さんは「雨で亀裂が広がり、被害が拡大するのを防ぐためです」と答えた。

 地震発生2週間後の訪問について泉田さんは「絶妙なタイミングだった」と振り返る。「地震から1週間もたつと、被災者は心身ともに疲れ、落ち込む。そこを励ましていただくことで、地域がバラバラになるのを防ぎ、改めて復興への気持ちを作ることができた」

 長岡市長だった森民夫(もりたみお)さん(68)は6日正午前、長岡商業高校グラウンドでヘリを迎えた。両陛下は長岡大手高校に移動し、体育館で、全村避難していた山古志村(現・長岡市)からの避難者に声をかけた。ひざを床につけた状態でいる時間が長かったためか、バスに乗るときには皇后さまのスラックスのひざに糸くずやほこりがつき、白くなっていたことを、森さんは覚えている。

 近くの長岡保健所で昼食をとりながら被災状況を説明した。長岡市民も被災しているなか、山古志村の全村避難を受け入れたことについて、天皇陛下から「山古志村民に親切にしていただき、ありがとう」と感謝された。

 森さんは東京大工学部建築学科の卒論のテーマが「コミュニティー論」で、建設省(現国土交通省)でも住宅政策が専門だった。村民が避難生活でバラバラにならないよう、04年12月に始まった仮設住宅の入居の際も集落ごとにまとまって住むことにこだわった。

 両陛下は08年9月、「全国豊かな海づくり大会」のため新潟県を再訪した。「復興した山古志を見てほしい」との地元の要望を受け、新潟市から長岡市の旧山古志地区に入り、名物の闘牛とニシキゴイを鑑賞した。

 同行した泉田さんは旧山古志地区で、高齢女性からこんな感想を聞いた。「両陛下は私より年下だけど、まるで両親に見舞ってもらったような気持ちになりました」(北野隆一