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(22日、大相撲名古屋場所14日目)

 「緊張しました。『フーッ』です」。支度部屋、31歳の碧山は全身から力が抜けたように息を吐いた。自己最多の12勝目。優勝の行方を、楽日に持ち込んだ。

 抜群の内容だった。立ち合いの突き合いで前へ。横への動きがある豪風のまわしをがっちりつかみ、真っすぐ攻める。土俵際で胸を一押し。札止めの場内から大きな拍手をもらった。

 同じブルガリア出身でレスリング経験者だった元大関琴欧洲の誘いを2度拒み、ようやく角界入りを決めたのが8年前のこと。当時189センチ、150キロ。順調に出世したが、2012年2月、どん底に落ちた。

 朝、ちゃんこを囲んだ師匠の田子ノ浦親方(元久島海)が数時間後に倒れ、急逝。「頭がバラバラになった」。故郷へ帰ろう、と思ったが、耐えた。「師匠の番付(東前頭筆頭)を超えるのが恩返し」。移籍先の春日野部屋で栃煌山ら実力者にもまれ、14年九州場所で関脇昇進を果たした。

 足踏みは長かった。だが今場所、「体と心のバランスがいい」と言う。心を支えているのは、結婚したばかりの同郷の妻の存在だろう。疲れて寝る前、東京へのテレビ電話で元気をもらうのが日課になっている。

 平幕優勝なら名古屋では6人目だが、可能性は低い。優勝決定戦に持ち込めたとしても、不戦勝を除いて18戦全敗の白鵬が立ちはだかる。「あした一番、集中して。勝てればいいな」と碧山。亡き師が好きだった水色の締め込みで、大事な千秋楽に臨む。(鈴木健輔)

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