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科学季評 京都大学総長・山極寿一さん

 細菌の働きを利用して人の体や心を治療する。そんな時代がやってくるかもしれない。

 私たちの調査チームは4年前、アフリカ・ガボンのゴリラに新種のビフィズス菌を発見した。ビフィズス菌は腸内細菌の一つで、今までさまざまな動物に50種ほど見つかり、人間は10種類と最多のビフィズス菌を持つ。新種の菌の生理活性はまだ明らかでないが、ビフィズス菌は糖を分解して吸収しやすくし、他の菌による腐敗を防ぐ働きをする。腸内細菌の中でも量が多く、長寿をもたらす効果があると考えられている。

 近年、立て続けに人と細菌の共生に関する本が出版された。今や細菌ブーム到来と言ってもいい。

 食中毒を引き起こすサルモネラ菌をはじめとして、数々の感染症を引き起こす細菌は、根絶すべき対象と考えられてきた。衛生意識と予防医療は、細菌との闘いによって作られてきたといっても過言ではない。しかし、細菌の中にはビフィズス菌のように健康や長寿をもたらすものもいるし、圧倒的な数の細菌と人はむしろ共生してきたと考えるべきだということが最近分かってきた。

 人の腸内には1千種類以上の腸内細菌が約500兆~1千兆個も存在し、重さは約1・5キログラムにものぼる。これらの細菌は病気を防ぐ働きをする。抗生物質を用いて病気を治したはいいが、共生細菌を死滅させてしまい、かえって免疫能力が減退してしまうことがある。

 かつて法定伝染病といわれた細菌による感染症はほぼ消滅した。かわりにアトピー性皮膚炎、花粉症、小麦アレルギー、1型糖尿病など、人の免疫系に関する病気や胃腸疾患が急増している。体の病気だけではない。うつ病、強迫性障害などの心の病も蔓延(まんえん)している。環境汚染や社会不安が増加したせいだと考えられてきたが、実は抗生物質や抗菌剤などの過度な使用により、共生細菌が減ったり、バランスを崩したりしたことも原因だという証拠が次々に発見されている。

 こうした「21世紀病」は、2…

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