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 スピードスケートの練習中に接触し、2人が負傷したのは、1年前の8月19日だった。1人は手術でシーズンを棒に振り、1人は引退を覚悟した。そして今、2人は来年の平昌(ピョンチャン)五輪の頂点を一緒に目指している。

 接触したのは押切美沙紀(24)と菊池彩花(30)=いずれも富士急。北海道十勝オーバルで、ナショナルチーム(NT)の一員として女子団体追い抜きの練習をしていた時だった。

 先頭の菊池がカーブ出口で転倒。後ろの押切を巻き込んでフェンスに激突した。その際、菊池は右ふくらはぎの腱(けん)などを断裂。1カ月の入院を余儀なくされた。

 「世界で戦えるレベルに戻れるのか」。2015年全日本選手権を制した菊池にとって飛躍を誓ったシーズン。不安を抱えながらも、入院中は足の指でタオルを引っ張るなど懸命にリハビリを続けた。押切に対しては「迷惑をかけたのでは」と気にかけていた。

 その押切は16年の全日本選手権で総合2位に入ったが、衝突で股関節を痛め、本来の滑りができないでいた。患部が痛む度に「なんで私が」と事故を恨むこともあった。仲間には苦しみを悟られないよう、無理に笑顔を見せていたが、そんな状態に耐えられず昨年末、そのシーズン限りでの引退を一度は決意した。

 転機は菊池が復帰した今年1月のNTのドイツ合宿だった。押切は、同部屋となった高木菜那(日本電産サンキョー)に、すべての悩みを打ち明けた。高木も同じくひざのけがに苦しんできた。「けがや今のつらいことが五輪につながると思ってもう一回頑張ろうよ」。仲間の励ましに、吹っ切れた気がした。

 2月の世界距離別選手権団体追い抜きで銀メダル獲得に貢献。押切は「私もつらかったけど、スケートができなかった彩花さんの方がつらかったと思う。五輪のメダルに向けて一緒に頑張りたい」と話す。

 一方の菊池も「最初に転んだ自分が悪い」と後輩を気遣う。そして「若手に負けないよう頑張りたい」。

 平昌五輪で金メダルが期待される女子団体追い抜きのメンバーは、補欠を含めて4枠。10月の全日本距離別選手権を皮切りに、また熾烈(しれつ)な戦いが始まる。(榊原一生)