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 学校に通っていたころ、ちょっと変わったルールや活動がありませんでしたか。「教育のため」と言われると否定しづらいけれど、なんだかモヤモヤが残るものも……。「地毛証明書」について報じた5月の記事をきっかけに起きた議論や、その後の取材をもとに、そんな「学校の不思議」についてみなさんと考えたいと思います。

 東京の都立高校の「地毛証明書」についての記事が朝日新聞デジタルに掲載されると、SNSで一気に反響が広がりました。

 多くは批判的な意見でした。ツイッターから引用すると、「くだらない」「いまだにこんなことやっているなんて、信じられない」「人を見た目で判断するなと教えるのが教育だ」「これは教師の仕事なのかな。ほかにやるべき仕事があると思う」などの声がありました。

 一方で、冷ややかな見方もありました。「学校が決めたことなんだし嫌ならそこに行かなければいい」「どこでもやるものだと思ってた」

 東京都教育委員会は「頭髪指導をする中で、(地毛が茶色い生徒らに)間違った指導をしないために行われている」と制度自体は是認しています。その上で写真を添付させることについては、「個別状況で真に必要な場合に限られるべきだ」との立場です。また、ある都立高の副校長は「生徒に地毛を大切にするよう呼びかけているので、証明書が必要だ」と言います。

 こうした議論に著名人も加わりました。教育評論家の尾木直樹さんは「身体について証明書を出させるなんて明らかな人権侵害だ」と憤ります。「大人は、子どもをケアしつつ人格を尊重するという、対等の関係を目指すべきだ。これは上からの一方的な押しつけだ」

 脳科学者の茂木健一郎さんもいち早く反応した一人。ブログで高校生に向けて「君たちは全く悪くない。おかしいのは、世間であり、都立高校の方なのです」と書きました。

 改めて話を聞くと、「生徒の人権を守るためと言うが、出自やアイデンティティーの証明を求めることが人権侵害だとなぜわからないのか」と話しました。「形式的には筋が通っていても、全体として個性や多様性をすごく抑圧している。まず髪を染めた人が不良、不真面目という認識モデルを疑うべきだ」と言います。

 ある都立高の教諭は「地毛の場合は指導の対象にはしないという、指導と人権配慮のバランスをとるための苦肉の策だ」と説明します。「そもそも茶色の髪の毛はダメだという頭髪指導こそ人権侵害だ。だが、学校にそれを求めているのは世間であり、日本社会。その議論をせずに地毛証明書だけを批判するのはおかしい」と話しました。(土居新平)

【地毛証明書の記事の要旨】

 都立高(全日制)の約6割が、髪の毛を染めたりパーマをかけたりしていないかを見極めるため、一部の生徒から入学時に「地毛証明書」を提出させているという内容でした。裏付けのために幼少期の写真を求める高校もあり、専門家からは疑問視する声も出ていると紹介しました。

 保護者が髪の特徴を記入して押印する形が多く、呼び方や書式は各校で違います。保護者も参加する入学前の説明会で、地毛かどうか疑わしいと思われる生徒に声をかけて用紙を渡す例もあります。(2017年5月1日朝刊、東京本社版などに掲載)

「万引きしないと」と署名

 「地毛証明書」について報じた後、朝日新聞社会部の情報窓口に、東京都が小学校低学年向けに作った万引き防止啓発リーフレット「万引きなんてしない!」について、メールが届きました。「直感的に『なにこれ!』と違和感を覚えた」と訴える保護者からでした。

 A4判4ページで「人のものをだまってとることははんざいです」と強調し、罪を犯した場合は、刑務所に入れられるか、罰金を払わされると説明しています。最終ページには「私は、何があっても、ぜったい万引きはしません!」と宣言文があり、児童が署名するようになっています。

 都によると、3月末に都内の全小学校に電子データを送ったそうです。各校で印刷して、道徳の授業や生活指導の時間に教材として使うといいます。高学年や中学生向けのものもあります。都青少年課の和田栄治担当課長は「万引きは、はっきり駄目だと伝えるための内容」と話します。署名は「友達に誘われるなどしても、揺るがない姿勢を示すため」と説明しています。

 ある小1の保護者の男性は、子どもの学級で全児童が署名をしたとして、「(子どもは)一律、『万引き予備軍』なのでしょうか。ものの大切さ、それに多くの人が関わることの意味を考えて良心を育てる姿勢が欠けている」と言います。喜多明人・早稲田大教授(子ども支援学)はリーフレットについて「厳罰化による対症療法であり、一定の効果はあるかもしれないが、子どもが自律的に解決する機会を奪ってしまう」と指摘しています。(峯俊一平)

清掃、ひざつき無言で

 日本の学校の風景としてよく話題にのぼるのが「掃除」です。文部科学省が2016年度から始めている「日本型教育の海外展開」でも、掃除や給食などの特別活動が注目されているといいます。

 子どものトイレ清掃には教育的な意義があるとして、横浜市は10年度から、市内の全小中学校計500校で、児童や生徒によるトイレ掃除を復活させました。従来は、用務員の業務と位置づけられていました。教職員向けに同市教育委員会が作った冊子には、「清掃活動で伸ばしたい力」として、公共心や規範意識、自律心の醸成などが挙げられています。ただ、その後のトイレ掃除の実施率や効果を調査する予定はないそうです。

 「清掃は心を磨く」として、独自のスタイルを採り入れている学校もあります。

 「かつては生徒指導が大変な学校でした」。埼玉県本庄市立本庄東中学校の関根栄一校長は言います。授業中に席を立つ生徒がいて、先生たちは困っていたそうです。そこで同校が注目したのが「清掃教育」でした。10年からは、ひざをついた姿で15分間黙々と掃除をする「無言ひざつき清掃」に取り組み、学校のホームページでも発信しています。「最初は怒鳴っていた先生もいました。でも、先生がしゃべると無言にならない。絶対に清掃中は怒らないでほしいと伝えました」と関根校長。先生たちも、生徒と一緒に掃除をしています。川田博樹教頭は「生徒に完璧に清掃をやらせようと思えば、教員もストレスがたまる。一緒にやろうと思えば、ストレスにならない」と言います。

 そのうち、黙々と掃除をする生徒の姿が、他の生徒たちの間で「かっこいい」と憧れられるようになったそうです。高学年になると、掃除をがんばったという「輝き賞」を受賞する生徒も増えます。こうした生徒を見習うために、高学年の教室掃除に低学年が「清掃留学」する機会も設けているそうです。

 朝日新聞の地方版によると、「無言清掃」は、長野県や福井県、佐賀県など各地で実施されています。(杉原里美)

前例踏襲、実は「珍百景」?

 現役の公立小学校の先生ら13人が2014年に出版した「学校珍百景 『学校あるある』を問い直す」(学事出版)は、学校に特有の光景や活動に光を当てます。日直や「朝の会・帰りの会」、席替え、上履きなど、これまで当たり前とされてきた「学校文化」について、「本当に必要なの?」と疑問を投げかけました。15年には「学校珍百景2 まだまだ出てくる『学校あるある』」も出版されました。

 編著者である千葉県浦安市立小学校の教諭塩崎義明さん(59)によると、学校には「無言清掃」だけでなく、「無言給食」もあります。「もぐもぐタイムなどといいますが、残さずに全部を食べさせるのが狙い。先生が子どもを管理することばかりに目がいっているように感じます」と話します。

 同様に、校門での一方的なあいさつ運動や、靴を5ミリのずれなくそろえさせるなど、「何のためのマナーなのかが抜けて、今までやってきたからというだけで残っていることが多い。それが珍百景を生んでいます」と指摘します。

 そして、こう問いかけます。「決まりを厳しくすればするほど、先生は口うるさくなり、ストレスもたまります。管理しようとして、自分の首をしめていませんか」

 疑問をもちつつ前例踏襲で続けてきたことが「珍百景」として取り上げられていると知った先生たちからは、「気が楽になった」と感想が届いているそうです。(杉原里美)

     ◇

 高校が地毛証明書を出させている理由の多くは「校則で染髪やパーマは禁止されており、地毛が茶色い生徒らを守るため」でした。でも、証明書を出した経験がある男性は「先生に染めていると疑われ、悲しかった」と話します。目的が一見、正しそうな学校のルールや活動が、実は誰かを傷つけてはいないか。立ち止まって考えてみたいと思いました。(土居新平)

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