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 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会の元事務局長・蓮池透さん(62)と、在日コリアン3世の人材育成コンサルタント・辛淑玉(シンスゴ)さん(58)が対談本「拉致と日本人」(岩波書店)を出版した。経緯や事情は異なるが、いずれも日本と朝鮮半島との間で家族の運命が翻弄(ほんろう)されてきたという点で意見が一致した。

 対談のきっかけは、蓮池さんが2015年暮れ、「拉致問題の膠着(こうちゃく)化は日本側にも原因がある」と著書で安倍政権を批判し、安倍晋三首相から国会で反論されたこと。辛さんが雑誌でこの話に触れ、月刊誌「世界」16年6月号での対談につながった。4回会って計16時間語り合い、今夏に対談本としてまとめた。

 辛さんは「蓮池さんが拉致問題を解決できない政治の不作為を批判したとき、よくここまで思い切ったなと感心しました」と語り、蓮池さんは「安倍首相ら政治家は『あらゆる手段で拉致被害者を取り戻す』と言ってきたが、具体的にしたことは制裁の強化ばかり。本当に取り戻すつもりなら、相手を分析して戦略を考えてほしい」と話した。

 北朝鮮をめぐる情勢が緊迫している現状について、辛さんは「小泉純一郎元首相のように訪朝して直接相手と話すことが必要。人間関係や損得もからめ、情理を尽くした対応をとってほしい」と話し、蓮池さんは「北朝鮮を攻撃すべきだという意見もあるが、体制が倒れれば拉致被害者がなきものにされる危険もある。被害者の安全を考えてほしい」と訴えた。(編集委員・北野隆一