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 愛媛県今治市玉川町の四国八十八カ所霊場57番札所・栄福寺に、足の不自由な少年が参拝後に突然歩けるようになり、寺まで乗ってきた荷車「箱車」を奉納したとの伝承がある。80年以上前の言い伝えとされてきたが、数年前に男性が「私が奉納した」と申し出てきた。寺の関係者は「言い伝えと思っていたが、実話かもしれない」と驚いている。

 栄福寺に伝わる話によると、1933(昭和8)年に足の不自由な15歳の少年が荷車「箱車」に乗って寺を参拝。その際に、連れていた犬に引っ張られて転倒した。思わず立ち上がったら、足が治っていたのに気づいたという。少年はこのお礼に箱車を奉納した。

 「奉納された」と寺に伝わる箱車は、後ろから押して進む木製の三輪車で、長さ約1メートル、幅約0・5メートル、高さ約0・8メートル。ふたを開けると、子ども1人が入れるスペースがある。現在も「寺の宝物」として本堂脇で公開されている。

 寺はこの伝承を理由に「足腰の健康に御利益がある」と知られているが、この出来事は当時の文章や写真には残っておらず、真偽が不明のままだった。

 「実話かもしれない」となったのは、3年ほど前に高知県に住むという男性から電話があったからだ。

 男性は「高知県の漁師町に住む90歳代」と名乗った。電話によると、男性は足が不自由なことを気に病み、母と一緒に死のうと入水(じゅすい)を試みたが死にきれず、その後に四国巡礼を始めた。15歳の頃に栄福寺に参拝し、その時に転倒したことで歩けることに気づき、乗ってきた箱車を奉納したという。男性は、自分が奉納した箱車が今でも寺で大切にされていることを知り、寺にお礼を告げたいと連絡してきたという。

 寺は、男性の名前や連絡先、詳しい事情などは聞き取れなかった、としている。

 住職の妻で僧侶の白川あかねさん(41)は「男性の話を聞き、箱車の話は伝承だと思っていたのに、本当だったのかも、と家族で大騒ぎになった。参拝当時に15歳だとすると、男性の年齢と合致する。わざわざ虚偽の電話をしてくる理由もないので、実話だと思いました」と驚いている。(直井政夫)