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 パラリンピックは障害者への偏見を助長する――。成功したと伝えられる2012年ロンドン大会後に行われた障害者への調査で、そんな結果が出た。25日で開幕まで3年となった東京大会で、心のバリアフリーは実現できるか。

 ロンドン大会後、英国の民間団体が障害者に対して健常者の態度が変化したかを尋ねたところ「変化がない」が59%、「悪化した」が22%だった。大会が障害者の評価にポジティブな影響を与えたという回答が81%に達した、英国政府の一般市民を対象にした調査とは大きな開きがある。

 さらに、ロンドン大会が選手以外の障害者のスポーツ参加への動機づけにはならなかったとのデータも出た。

 東京大会に向けて、決して看過できるデータではない。内閣官房の試行プロジェクトの一環として「心のバリアフリー教育・研修の評価」に関する提言書を提出した一般社団法人コ・イノベーション研究所の橋本大佑代表理事も同様の問題意識を抱く。「東京パラリンピック開催決定後に心のバリアフリー教育が増えたことはいいことだ。ただ、障害者への偏見が助長されるものも多い」と話す。

 なぜなのか。ロンドン大会や16年リオデジャネイロ大会後の影響についての調査をした橋本代表は「高度な運動能力を持つパラリンピック選手と、そうでない障害者との間に、隔たりが生じている」と指摘する。現状の心のバリアフリー教育が「障害者は能力が劣っていてかわいそう」と極端に過小評価するか、「障害者には特別な能力がある」と過大に評価する二極化を招き、悪影響を及ぼしかねないという。難しい状況を努力で乗り越えない障害者は怠け者と考える人が増える可能性がある。

 リオ大会が開催されていた昨年9月、視覚障害者のジウソン・ジョゼフィーノさんの通勤に記者が同行した。リオ市街地では、携帯を見ながら歩く人がジウソンさんにぶつかり、何も言わずにその場を去る光景が目立った。

 「パラリンピックが来ても、みんなスポーツを見ているだけ。障害者に助け舟を出してくれる人は少なくなっている」とジウソンさん。そして、次のパラリンピックを受け入れる東京にはこう助言した。「障害者を街で見かけたら『手伝いましょうか』と声をかけて。手助けが必要ない時もあるが、声をかけてもらえれば事故は起きない」

 障害学の研究者で、自身が視覚障害者でもある東京大学教育学研究科付属バリアフリー教育開発研究センターの星加良司准教授は、「特別な人に特別な優しさを提供しようという意識からは、心のバリアフリーは実現されない」と話す。

 個人の機能が困難を生んでいるのではなく、多数派に都合良く作られた社会のルールや仕組みが、人に困難をもたらしているという発想の転換が必要だと訴える。「社会をどう変えていくのかに注目し、他者のニーズを聞き取る大切さに気づく。パラリンピックがそんなきっかけになれば」(後藤太輔

ロンドン大会を通してスポーツに取り組みたいと感じましたか?

(2013年6月、18歳以上の障害者1014人に調査)

【大会を通して、スポーツはより遠いものになった】4%

【スポーツに取り組みたいと感じなかった】79%

【大会に関わらず、現在スポーツを行っている】7%

【以前やっていたスポーツに再度取り組みたいと感じた】7%

【新しいスポーツに取り組みたいと感じた】3%

※英国の民間団体による障害者への調査から