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鳥居りんこさん:1

 エッセイストの鳥居りんこさんに、両親の介護に奮闘した10年余を語っていただいた連載から1年。今年3月に亡くなった母親の最期の日々について、改めてお話を聞きました。3回に分けて連載します。

     ◇

 母は進行性核上性まひという難病のため自宅介護を断念し、介護付き有料老人ホームで暮らしていました。昨年秋、母が救急搬送されたという連絡が、私に入りました。

 その前夜まで4日連続で、私は母と外食をしていました。自力で歩けない母と外出するのはとても大変でしたが、母の認知症が進まないうちにやらなければいけないことが、いくつかあったためです。

 4日目の夜、母はピザやパスタをたくさん食べました。絶好調で、食べ過ぎだと私が止めたほどです。その晩、母は老人ホームで吐きました。吐いた中に赤いものを見つけた看護師さんが、「血だ」と驚いて救急車を呼んだそうです。

 今から思えば、赤いものはトマトソースでしょう。でも、入院した母は絶食させられて腕に点滴、手にミトン。ベッドに縛り付けられて、一気にせん妄の症状が出ました。

 私は一日中、母に付き添いました。病院側から、家族がいる間は拘束を解くという条件を出されたためです。

「後生だから」

 あるとき、隣のベッドのおばあさんから何度も「お姉さん、お姉さん」と呼ばれていることに気づきました。

 カーテンの内側を見ると、おばあさんが「後生だからこのミトンを外してください。後生だから、後生だから」と。おばあさんはベッドに縛り付けられ、両手にはミトンをはめられていて自力では外せない。私が勝手に外せるわけもなく「看護師さんに言ってみるからね」と答えるしかないのですが、私の気配を感じると、そのおばあさんは何度も「後生だから」と繰り返すのです。

 数日後のある日、ストレッチャ…

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