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鳥居りんこさん:3

 エッセイストの鳥居りんこさんに、今年3月に亡くなった母親との日々を語っていただいた連載の3回目。最終回です。

     ◇

 母に水分を飲ませるのをやめてから、楽な死に方などない、ということを私は思い知らされました。栄養失調で、でもなかなか死ねなかった母の姿は、壮絶でした。

 水を含ませた脱脂綿で母の唇をぬぐうと、魚のように口をパクパクして食いついてくる。でも、それ以上の水はあげられない。母は苦しそうで、見ている私も苦しい。いっそ私が殺してあげようか、という誘惑に、何度もかられそうになりました。

 私は仕事をすべてキャンセルし、仮眠をとるだけのボーッとした状態で、一日中ずっと母のそばについていました。

病室の壁に桜の花

 口腔(こうくう)ケアのために、お気に入りの職員が来ると、母は口を開ける。でも、私には口を開けない。母はこういう死を望んでいなくて、「なんで最期まで私を苦しめるの? よくもやったわね」と思っていたのかもしれません。

 老人ホームでみとるのはとても大変なことですが、母が入所していた老人ホームでは、職員のみなさんがそれぞれの立場でそれぞれのベストと信じるみとりケアを120%やってくれたと思います。

 母の病室の壁に3月上旬、桜の花がちりばめられました。床ずれ防止のため、2時間おきに体位交換をしていましたが、壁側を向いたときに白い壁だけでは切ないだろう、4月のお花見にはもう参加できないだろうと考えた職員のみなさんが、折り紙で作って飾り付けてくれたんです。ほかのお年寄りの方たちも一緒に作ってくださり、最後は壁一面を覆って、桜が満開に見えました。

 庭に咲いた早咲きの桜を持ってきて、生けてくれた職員もいました。「老人ホーム混声合唱団です」と言って、職員8人で母の好きだった曲「昴(すばる)」を枕元で歌ってくれたこともありました。

「今夜あたりかも」

 みとりに入って4週目。母の呼吸が浅くなり、手足が冷たくなってきたので、私は必死に温め、リンパマッサージをしていました。

 すると、施設長が「今夜あたりかもしれない」。

 姉と私に向かって、「ベッドを…

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