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(19日、大相撲秋場所10日目)

 支度部屋に戻った貴景勝は風呂を浴びた後も、まだ少しぼうぜんとした表情だった。取組の内容を聞かれても「覚えていない」「頭が真っ白」の繰り返し。幕内最年少の21歳が無我夢中で初金星をつかんだ。

 先場所完敗した日馬富士との結び。身長175センチの低さを生かした立ち合いで頭からぶつかった。土俵中央で突き合うといったん離れてにらみ合い。ただ、頭は冷静だった。「まわしを取られないようにうまく間合いを取った」と八角理事長(元横綱北勝海)。二度、三度と頭で当たって離れると、機を見て飛び込んできた横綱を右に体を開いてかわした。つんのめりながら崩れた横綱を横目に国技館の大歓声を浴びた。

 兵庫県出身。中学横綱になり、埼玉栄高在学中に憧れの元横綱が指導する貴乃花部屋に入門した。ちょうど3年前に初土俵を踏み、今年初場所で新入幕を果たすと、春場所には敢闘賞。上位初挑戦の先場所は5勝に終わったが、回転の良い突きで愚直に前に出る相撲は将来性を感じさせる。

 さらに負けず嫌いな性格に火を付けたのがライバルの存在だ。中学時代から全国大会で競い合ってきた同学年の阿武咲(おうのしょう)が5日目に初金星。「刺激というか、自分も、という気持ちはあった」

 二重三重の報道陣の輪の中で、次第に落ち着くと、ぽつりと言った。「まだ相撲人生はあるけど、(今日が)一つのターニングポイントになったと思う」。また一人、楽しみな若武者が大きな自信を手にした。(岩佐友)

 ●日馬富士 今場所四つ目の金星配給。「普通に足がついていかなかった。心と体が一致しない」

 ○豪栄道 「冷静に」と、9連勝で首位維持。「(優勝争いは)気にせず、自分のやることをしっかりやるだけです」

 ○千代大龍 ただ一人、星の差一つで首位を追う。「自分らしい相撲が取れればいい。(終盤戦も)無心で当たっていきたい」

 ○嘉風 4連敗のち6連勝。「初日から変わらず、淡々と(相撲を)取っている。それが結果に出ているんじゃないですか」

 ●阿武咲 2連敗で3敗目。優勝争いから後退したが、「まあ、明日っすね。思い切って行きたいと思います」。