構成・吉田純哉
2017年9月23日07時28分
セ・リーグを2連覇した広島カープの緒方孝市監督と、佐賀・鳥栖高の野球部でともに汗を流した同級生の高木健さん(48)=佐賀・三田川中教諭=。高校時代の思い出やプライベートで見せる素顔などを語ってもらった。
鳥栖高(佐賀県)の野球部で高3の時、緒方が主将で、私が副主将でした。知り合ったのは高校から。主将を任されて、初めはどうしたらいいか分からない状態でした。そこから、プレーで後輩や同級生をどんどん引っ張っていました。あんまりべらべらしゃべらないですけど、「もうちょっと声出していこうぜ」って言葉もかけていました。
頑固といえば、そうですね。友達には冗談も言いますし、フランクに話して盛り上げてもくれます。ただ、周りの人に上手に表現できないというか、表現しないというか。サービスすりゃあいいのにと思いますよね。
カープの試合をテレビで見ていても、またむっつりしているなあって、笑っていないなあって思います。元々、感情を表にあまり出さないですよね。嫌なことを言われても、はっきり言い返さずに、むっとするような感じですね。
最後の夏は甲子園に行けずに、緒方が最後の打者になった。大泣きするわけでもなかった。打てなかったから、悔しさを押し殺す感じ。責任感の強さがあった。弱音を吐かないし、頼りになる存在でした。
プロに入ってから上手に話しているのを見て、成長したなって感じます。人前で話さなきゃいけない時には、よく相談に乗っていました。高3の夏、佐賀大会で緒方が選手宣誓をしたんですけど、「練習するから付き合え。どんなこと言ったらいい」って。学校を出て、人気のない遠いところまで行った。恥ずかしかったんでしょうね。
卒業文集には、山本有三の小説「路傍の石」の一節を書いていました。「たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに生かさなかったら、人間うまれてきたかいがないじゃないか」と。中学の教科書に載っていたから、頭の中にあったんじゃないかな。その横には「俺は輝くぜ」って記していました。カープ入りが決まっていたので、強気でした。
去年マツダスタジアムで試合を見た時、監督室に呼んでくれました。球場には早めに入って、スコアラーの用意したビデオを見ていると聞きました。そこまで分析しているとは想定していなかった。自分でしないと気が済まないんでしょうかね。
こんなことも話していました。「負けが込んでしまうと選手は首を切られてしまう。俺の責任は重いぞ」って。「お前、命かけてやってるの? こっちは生活かけてやってんだよ」って冗談めかして聞かれたこともあります。大変な中でやっているんだなって思いました。高校時代は自分が良ければいいだろっていう部分があったので驚きました。後輩にアドバイスすることもなかったですし。
成績を残せているのは、信頼できるスタッフさんがそろったのが大きいんじゃないですかね。やっぱり高ヘッドコーチと石井打撃コーチは信頼しているんだなと感じます。「判断に迷うような時、高さんいると安心できる」「(石井)琢朗は色々なアイデアを出してやってくれているからありがたい」って。
今シーズン、ここまで突っ走るとは思っていなかったんじゃないかな。開幕前、「それほど補強はしていないから、今年は甘くないぞ。5割くらいでいって、秋に連勝して抜け出せればいい」って言っていました。「巨人があれだけの補強をした。DeNAは筒香が怖いなあ」って。「一つ一つ目の前の試合を戦うだけ」とよく言っていますけど、慢心はしていないですよね。
シーズン中に連絡が来ることはほとんどないです。交流戦で最高勝率球団となったソフトバンクと勝敗では並んだけど、直接対決の結果で2位だった。「毎年一つずつ上がっているけど、なかなか野球の神様はすぐに結果を出してくれんな」とメールを送ったんですよ。そしたら「ほんまやね」って。珍しく返信がきました。
去年、日本一を取れなかったのは、悔しかったでしょうね。監督の経験値の差が出た。1月に高校の野球部のOB会があって、先輩から日本シリーズのことを聞かれていましたけど、ほぼしゃべらなかった。負けず嫌いですから。むっとしたり怒ったりはしないけど、「まあいいじゃないですか。色々ありますよ」って角が立たないようにしていた。その一方であいさつでは言っていました。「今年狙うのは日本一」って。(構成・吉田純哉)
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