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 総選挙目前。将来が見通せない中、どの候補を選ぶべきか、有権者も悩むところがあるかもしれない。自然の中を生きる動物の世界では、どのようなリーダー選びがされているのか。生態に詳しい長崎バイオパーク(西海市)の伊藤雅男副園長(56)に聞いてみた。

 ――動物の世界で求められるリーダーの資質とは

 人間と重なるところがあるかもしれませんが、「あいつが言うなら、ついていこう」と思われること。群れ社会の生き物に限りますが、狩りをする中でリーダーが他の個体を引き連れて行くことがあります。みんなで洞窟に行き、塩をなめる象や、狩りの時にみんなで移動するライオンがその例です。

 えさがどこにあるか分かるほど知識が豊富で経験もあって判断力があり、危機管理ができる。人間でも理想ですよね。動物の場合、「どうしよう」って迷っている間に敵にやられたり、餓死したりしちゃいますから。

 ――海外の学術誌で、リカオン(アフリカに生息するイヌ科の肉食動物)が狩りに行く時、くしゃみで合意を示す「投票」をして、行くかどうかを決めているとの研究が発表されました。このように「投票」する動物は他にもいるのでしょうか

 リカオンは賢いですから。合意は色んな動物であると思います。園のカピバラも誰かが中心となって、一斉に同じ方向を向いて歩き出し、池に飛び込むことがあります。鳴き声がきっかけなんでしょうけど、動物の言葉の翻訳機がないから分かりません。

 群れ社会の動物たちの連係プレーはすごい。年に一回、リスザルの予防接種をするときに僕が捕獲係をするんですが、ちらっと姿を見せるだけで、1匹が鳴き始めて「あいつ来たぞ!」って仲間に教える。「あいつを見とけ」と言われているのか、若い個体は前面に出てきて、じっと僕を見張っている。

 特に、群れのなかで弱っている個体や子どもを医者に連れて行こうと捕まえようとすると、リスザルは飛びかかってきますし、いつもは「のほほん」としているカピバラでも、鼻息をたてて襲ってきます。

 誰かに何かあっても、情報収集もせず知らんぷりで通り過ぎちゃうような、人間の都会ではあり得ないことだと思いますね。動物から学ぶことは多いです。

 ――伊藤さん自身が候補者を選ぶ基準は

 その時によって変わりますが、候補者が少なく選びようが無い時は困ります。

 政治に特別興味があるわけではない人たちにとって、候補者による名前の連呼と握手では何も伝わってこない。特に車で職場に通うとなると、都会のように駅前で立ち止まって演説を聞くことはできず難しい。マニフェストも実行するか分からないので、「選ぶ」ことが大変ですよね。

 選挙には、日曜日の朝、出社前ほぼ一番に投票所に行くようにしています。もし夕方、動物に異変があったら、放っておいて選挙に行くことはできない。朝一番に行くと安心しますね。

 ――動物や環境問題といった観点で必要な政策は

 例えば、野生の鹿やイノシシが増えすぎて駆除しなくてはならない状況になっている。今まで我々が「命を大切にやってきた」なかで相反することなんですけど、それをしないと、自然全体が崩れて何も残らなくなってしまう。生態系を守るために、法律を作って終わりではなく、どう動物と人間が共存するか、その先を考えないといけない。危害を加えるイノシシを殺処分するだけでは終わらない。

 この前、子どもの頃に遊んだ長野県の里山に久しぶりに入ったら、イノシシが山から下りてこないようにフェンスが設置してありました。こういうことをしないと一緒に暮らせないんだと複雑な気持ちでした。今は、昔のように人が山に入って整備することもなくなり、山は荒れ放題。動物のえさになるドングリがならないとか、問題が起きている。ボランティアを募るのも難しく、お金もない。行政としても「予算があまりない」というのはあると思いますが、議員の政務活動費など、無駄があれば削減して欲しいですね。(聞き手・田部愛)

     ◇

 いとう・まさお 東京都出身。幼い頃、祖父母がいる長野県の里山で遊び、動植物の魅力に触れる。高校時代は上野動物園で動物を紹介するボランティアを、卒業後は進化生物学研究所(東京)に住み込み、動物を飼育。カピバラの研究も手伝った。1983年から長崎バイオパークの飼育員に。昆虫からリスザルまで、これまで家で飼った生き物は100種以上。好きな動物はカバ。