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 「北朝鮮の脅威に対し、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を私は全身全霊を傾け、突破していく」。9月25日夕、解散を表明した記者会見で安倍晋三首相は述べた。北朝鮮がミサイルを発射するたびに多くの国民が恐怖を覚え、北朝鮮への反発を高める。選挙でも北朝鮮への対応は争点の一つになっている。在日の人々はいま何を感じているのか。山口県下関市のコリアンタウンを訪ねた。

 赤、青、緑。鮮やかな彩りが施された大きな「釜山門」。JR下関駅から国道を挟んだ北側に立つ門の先を進むと、焼き肉屋や雑貨店が軒を連ね、在日コリアンたちが暮らすグリーンモール商店街が現れる。

 朝鮮通信使が訪れていた江戸時代から、下関と朝鮮半島との縁は深い。市は韓国・釜山広域市との姉妹都市となってから今年で41周年を数える。グリーンモール商店街は「下関のリトルプサン」をうたい、毎年11月には韓国の伝統芸能が披露され、料理が振る舞われるイベントを開くなど交流の中心となっている。

 2002年のサッカーW杯で日韓共同開催したときや、韓流ブームの折には多くの観光客らでにぎわった。だが、最近では両国関係の冷え込みや、北朝鮮のミサイル発射などの影響で客足が遠のき、売り上げも減少しているという。

 何人かの商店主に、衆院選について話を聞こうと試みたが「政治的な発言をすると、商売に影響が出る」と口を閉ざした。

 解散が確実視されるようになっていた先月22日、グリーンモール商店街からもほど近い劇場に山口朝鮮初中級学校の児童、生徒計24人を含む市民約130人が集まった。

 日本で生まれ育った茨城朝鮮初中高級学校の高校3年生たちが、修学旅行で北朝鮮を訪れた際の様子などを撮影したドキュメンタリー映画「蒼(そらいろ)のシンフォニー」を鑑賞するためだ。

 北朝鮮で陽気に振る舞う生徒たちや、バーベキューを楽しむ市民たち……。和やかな場面には笑いも起きたが、ヘイトスピーチの団体が朝鮮学校に押し寄せて「スパイの子ども」と怒声を浴びせるシーンになると、劇場は重苦しい雰囲気に包まれた。

 上映会を実施したのは、山口朝鮮初中級学校の保護者らでつくる実行委員会。北朝鮮をめぐる国際情勢が緊迫化するなか、学校への影響を心配する意見もあったが、多くの日本人も足を運んだ。

 朝鮮学校OBで、グリーンモール商店街で長年商売を続けている在日2世の男性は匿名を条件にこう話した。「日本で生まれ育った私は、平和な社会を70年以上守り抜いてきた日本を素晴らしい国だと思っている」「北朝鮮の体制には問題が多いが、政治・外交と教育は別物。朝鮮学校の子どもたちに罪は無い。日本人らしい優しさで彼らを包み込んでほしい」(白石昌幸)