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 朝日新聞厚生文化事業団は今年2月、東京・大阪で国際シンポジウム「認知症になっても安心して暮らせる街~認知症フレンドリーコミュニティー~をめざして」(認知症の人と家族の会、朝日新聞社、朝日新聞厚生文化事業団主催)を開いた。

 英国アルツハイマー協会のジェレミー・ヒューズ会長による基調講演(東京)の全文は次の通り。

     ◇

 本日は、このような形でお招きいただき、また重要なシンポジウムに参加させていただき、大変うれしく感謝しております。英国で実施してきた様々な活動について、皆さまにお話しさせていただくのは、私にとっても大変喜ばしいことです。

 日本におきまして二つの組織が、このようなことを可能にしてくれました。まず、朝日新聞社、朝日新聞厚生文化事業団です。メディアの重要性というものは言うまでもありません。人々の認知症に対する見方を変えてくれる力を持っています。ですので、このような形のシンポジウムを開催することにも非常に意義があります。朝日新聞社にこのような形で積極的に関与していただけるのはうれしいことです。話すだけではなく、何かを行動に移していかなくてはいけないと思います。

 もう一つの組織、日本の政府に対しても謝意を表したいと思っております。現在、日本政府は、日本の認知症関連団体だけではなく英国政府とも手を携えて、認知症についての理解促進を国際的に展開していこうとしています。

 京都における国際会議についてご紹介がありましたが、このような日本のリーダーシップが世界の関心を引くことになると信じています。このシンポジウムにおきましても、ぜひともリーダーシップを発揮していただき、認知症を周知して、よりよい環境を整えていくということを、私たちは推進していきたいと思っています。

 ADI会議の1日目に特別なシンポジウムがあります。今日の継続ということになりますが、4月26日に開催されるシンポジウムに関して皆さまに申し上げたいと思います。こちらは日本の「認知症の人と家族の会」と「ADI=国際アルツハイマー病協会」の共催のもとに開催されます。

 先ほどプレゼンテーションの内容を見てもらいましたが、今後20年、認知症は中所得、低所得国にとって大きな健康や保健医療の問題となることが予想されます。そこで日本や英国が現在経験していることは、世界のほかの国々に対して非常に大きな影響を与えてくれるだろうと思っています。

 英国でも様々な認知症のサポートを行っています。また英国アルツハイマー協会は、北アイルランド、そしてスコットランドにも関係団体があります。私たちは健康、保険や社会システムを変えていきたいと思っています。それによって、さまざまな研究を進めていきたいとも思っています。認知症に対しては、まだまだ十分な研究は行われておりません。がんの研究に比べると、認知症の研究はそのわずか6分の1にすぎません。

 社会を変えていくためには、社会全体が一丸となり認知症の人を支えていくことが必要です。その観点から、認知症フレンドリー(認知症の人にやさしい)コミュニティーという、地元・地域社会の推進を提唱しています。

 さて、この最初にありますのが「認知症宣言」です。七つの声明によって構成されています。認知症の人、例えば、丹野さんのような人は、認知症がどういうものかという直接の経験があります。また認知症の人の家族は、どういうことを悩んでいるのか。それを七つの声明にまとめています。これは非常に簡潔な言葉ですし、社会の中で提言していくことができます。認知症の人の権利、尊厳というものを無視してはいけないということをまとめています。

 丹野さんのスピーチには感動を覚えました。やはり、このような形で発言していかなくてはなりません。それによって地域を変えていかなくてはいけませんが、その端緒となるのが認知症の人の生の声です。私たちはこれを「認知症宣言」と呼んでいます。「私は、こういうことである」ということを示している七つの声明で、「I Statement=私の声明」と言っています。

 1.私は、自分についてなされる決定を自分自身で選択・管理し、それに対する影響力を持つ。

 2.私は、サービスの目的が自分自身のニーズに合わせてつくられていることをわかっている。

 3.私は、自分の人生、生活を生きるための支援を得ている。

 4.私は、自分に必要なものを維持するための知識、ノウハウを持っている。

 5.私は、自分が尊重されていると思える、自由で、サポートの得られる環境に住んでいる。

 6.私は、家族、地域社会、および市民社会の一員として帰属意識を持ち、尊重されていると感じている。

 7.私は、現在の私によりよい生活と未来に希望がある、そのような研究が進められていることを知っている。

 これが七つの声明です。

 さて次に、認知症フレンドリー・コミュニティーは、どのようなもので構築されているかということを一つ一つ見ていきたいと思います。そして何が重要なのかを示していきたいと思います。

 認知症とともに生きていくことは可能です。また、幸せな環境のもとで住むことは可能です。認知症とともに生きることは暗いことではありません。もちろん簡単なことではありません。認知症が進行するにつれて、深刻な問題が表れるかもしれません。しかし、それらをサポートする地域社会があれば、それを克服し、明るく生きていくことができることを、この絵は示しています。

 では、認知症によって影響を受ける人々が未来を形づくれるよう、自信を持てるようにするには、どうしたらいいのでしょうか。これが私どもの「認知症宣言」で、2009年に作成されました。

 毎年、英国で実態調査を行っています。認知症の人がどのようなサポートを求めているのか。また一般市民は、認知症の人へのサポートをどうとらえているのか。家族や介護者はどう思っているのか。

 私たちは「Ipsos MORI」という、英国で2番目に大きい調査会社を使って定量的な調査と定性的な面談調査を行っています。現在もこの調査は進行中で、私どもの全国大会で5月18日に発表されることになります。おそらく4月26日に実施される京都の国際会議のシンポジウムでは、最終結果ではありませんが、この実態調査の結果の一部をご紹介できるのではないかと期待しています。

 認知症フレンドリーな街づくりを実行することには意識調査が必要です。一般の人々が、どう思っているのか。認知症の人にどのようなことを感じているのか。どのようなことを必要としているか、ということを把握する必要があります。

 そして3番目ですが、認知症の人々を勇気づける。自分たちが社会に貢献しているという意識を持つようになってほしいと思います。

 また地域を変化させる、社会を変革させていくということは、認知症の人々が率先して実行しなければなりません。先ほどのお話の中にもスコットランドの方のお名前がありました。またケント州の女性も認知症の活動を行い、様々な組織を率いて社会の変革に挑んでいます。

 この写真の男性はアーニー・モルトさんです。彼はジェレミー・ハント保健大臣からトロフィーを授与されています。モルトさんは昨年、アルツハイマー協会が選ぶ最も感銘を与えた個人賞を受賞しています。これは英国全体での審査を経ています。

 彼は助けを求める人々に対して手助けを惜しみません。そして認知症カフェを地元でオープンしました。また消防署で行われる安全・安心プログラムにも協力しています。また地元の駅の改善にも関係していて、認知症の人の視点から発言しています。モルトさんのような人の貢献によって、世界は少しずつ変わっていくのです。

 4番目は早期診断です。会社や患者個人に合わせた総合的な検診や治療の徹底をすることです。これは「あなたは記憶力の減退を悩んでいますか」という小冊子です。早い段階で診断を受ける必要があることを、一般の市民に啓蒙(けいもう)するものです。

 認知症の疑いがある人のなかで、3分の1の人が認知症という診断を受けない、または診断を受けることを拒否しています。これに対して私たちは警鐘を鳴らしています。まだまだ認知症の診断が半分ぐらいしか行われていないのが現状です。

 何か記憶力の問題があると感じたときには、医師の診断を受けるべきだ。また医療の支援を受けるべきだと発信しています。認知症は1人だけで悩むものではない。支援があるのだからその支援を受けてください、ということを言っています。

 ここでは「以前より健康になりました」という一人の方のコメントがあります。自分の記憶力が衰えている原因について、かかりつけ医(GP)の意見を求める勇気を与えてくれた、という反応も出ています。

 記憶力の低下に関するキャンペーンの実施や、医師や研究機関と協力することによって、医師に認知症の早期診断が重要であることを私たちは伝えています。

 認知症の原因はいろいろですが、例えば手術を行うことに関して、認知症だということを患者に伝える必要はない、と主張する医師もいます。私たちは、やはり認知症だということをきちんと伝えることで、その問題に直接的に対処し、また、その地元で積極的に自分の人生を送ることができると考えています。孤立することのないようにサポートを日々得る。そして自分のやるべきこと、自分のやりたいこと、つまり地域の一員として貢献しているという自尊心を維持するように仕向けるべきだと私は考えています。

 交通機関も重要です。いわゆる移動手段です。認知症フレンドリー・コミュニティーのプログラムにおいて、交通機関はアクセスが適切であり、使い勝手のよいものでなくてはなりません。

 この写真はバス停です。そこに座席がありますけれども明るい色で塗られています。認知症の人は色の識別が困難だといわれています。だからこそ明るく、また際立つような色が使われるべきです。認知症の人がバス停で待っている間に、例えば雨などで座席がぬれて、識別できなかったらその人は座ることができません。そういうことに配慮しています。

 英国においては新しい鉄道網を敷設中です。HS1、HS2というような高速鉄道です。そのような新たに敷設される鉄道の駅舎に関しては、認知症フレンドリーな設計を提唱しています。

 タクシー会社も積極的に関与しています。認知症の人が家から外に出て、お店に行く、コミュニティセンターに行く。また、さまざまな地元の活動に参加するためにはタクシーが非常に重要な役割を果たしています。

 ロンドンのタクシーは有名なブラックキャブですが、ドライバーになるには「ナレッジ」と呼ばれる非常に厳密な試験を受けなければいけません。このナレッジには、数年前から認知症に関する質問が付け加えられました。ですのでタクシー運転手は、認知症の人を乗車させる時は、必要なサポートを行うことができるようになりました。

 ガトウィック、ヒースローの二つの国際空港でも現在、認知症フレンドリーな環境を作っています。スタッフは認知症の研修を受けています。空港に行くと認知症の人は、誰でも混乱し、戸惑ってしまいます。そのときに適切なサポートを提供できるようにしています。

 コミュニティーを基盤として、さまざまな解決策を出していかなければいけませんが、地域活動というものは包含性、統括性というものがなくてはなりません。現在英国内では220の自治体、地域において、認知症フレンドリー・コミュニティーのプログラムを実施しています。市町村レベルで、さまざまな規模の活動を実施しています。

 例えば、音楽を楽しんでいる認知症の人が大勢います。歌う、という能力は脳の一部で非常に長く維持、定着するので、たとえ会話の能力を失っても歌う能力は維持されることがあります。ですので、音楽は非常に重要です。合唱など音楽を楽しめる機会を多く提供して、皆さんに楽しんでもらうことが重要だと考えています。

 交通機関や音楽だけではありません。様々な方法や活動で、認知症の予防や改善に関与することができます。スポーツ活動もそうです。スイミングプールに行って泳ぐ。映画館に行く。特に若いころ見た古い映画の鑑賞会も催されています。

 これは交通手段です。先ほどのモルトさんが住んでいる町、ダーリントンの駅では、認知症の人々にもアクセス性の高いものであるようにという活動がなされています。

 クリケットは英国の国民的スポーツですが、世界で最も伝統のある有名な「メリルボーン・クリケットクラブ」でもプログラムを実施しています。認知症の人が、英国全土からこのクリケットクラブに集まる企画を計画しています。また、参加した認知症の人に評価をしてもらうのも重要です。どういうところが良かったのか、悪かったのか、ということを聞きます。

 この企画では「ミステリーショッパー」も実施します。認知症の人に「覆面調査員」になってもらい、クリケットの試合のなかで、様々な問題点をあぶり出してもらいます。

 10月には高齢者の人々が「シルバーデー」というクリケットの試合に招待されます。シルバーデーとは「白髪になってもクリケットを楽しんでもらいたい」という意味ですが、この日は認知症について学んだボランティアの人々が、認知症の人が試合を楽しめるようにサポートします。

 クリケットは英国では国民的なスポーツです。みんなが大好きなクリケットを認知症の人も楽しみ、参加できるようにします。いまお話ししたのは、メリルボーン・クリケットクラブという、たった一つの事例ではありますが、世界的にも有名な競技場の「ローズ・クリケットグラウンド」で認知症フレンドリーな取り組みが積極的に進められています。

 先ほども申し上げましたが、自由に移動できる物理的環境、そして動線の指標が必要で、さらに色分けも重要です。例えばトイレのシートは非常に強い色になっていて、壁とシートがはっきりと識別されるデザインになっています。またバス停の座席は赤く塗られています。

 左上の写真はスーパーマーケットの「セインズベリー」の例です。スーパーは人々の往来が激しく、こういった環境は認知症の人にとっては、それほど心地良くありません。店内は相当な騒音に満ちていますし、人々は忙しげに行き来しています。スーパーとしては、多くのお客に来てもらい、買い物を迅速に済ませてもらうのが理想です。ですので、レジ係も精算を速く処理できるように訓練を受けています。

 しかし、セインズベリーは「スロー・ショッピングデー」というイベントを実施しています。様々な行動を、この日はゆっくりとしたものに変更してもらうのです。スーパー内では、売り場の横に椅子を用意します。普段より多くのスタッフを配置し、また飲み物なども準備して、買い物をする人がいつもよりゆっくり楽しむことができるようにします。 認知症の人は、往来が激しい場所ではおびえてしまうことがあります。静かな環境の下で、ゆっくりと買い物を楽しんでもらえればと、これを考えました。

 このイベントは、認知症の人にとって、より良い環境になったわけですが、同時に、認知症の人がスーパーでの買い物を楽しみ、滞在時間が長引くことにより、売り上げが増加したことも判明しました。

 認知症フレンドリー・コミュニティーのなかでは、さまざまなプログラムが実施されていますが、これは特定の誰かのために行っているわけではありません。お店が認知症の人のために実施したプログラムは、自分たちの業績にも反映します。様々な店や活動が、認知症フレンドリーな環境になると、ある意味でビジネスチャンスにもつながります。商業的に事業というのは、社会的な責任を果たしていかなければいけないという使命も持っています。

 だからこそ、さまざまな業態の事業者も参画が可能なのです。宗教団体、地方行政、大企業から街角の小さな店などまで参加することが可能なのです。それによって、地域社会における認知症への理解がより深いものになります。

 英国でも日本で始まった「認知症サポーター」制度を取り入れて、「認知症フレンズ」として実施しています。このプログラムによって、全人口の30人に1人が認知症サポーターになっています。これにより啓蒙活動が行われ、認知症に対する認識が増加しています。まだまだ日本ほど数は多くはありませんが、現在180万人のサポーターが英国で育っています。

 私たちはいろいろな評価を行っています。これが大きな変化をもたらしていることを私たちは確認しています。幾つかの統計的な数字をごらんいただきたいと思います。

 認知症サポーターになった人に対しての質問で、60%が「認知症の人と自信を持って交流できるようになった」と回答しています。77%が「認知症に関する理解が深まった」。71%が「介護者として認知症にやさしいということ、これは認知症の人にプラスの影響を与えるよう、地元社会、地域社会を鼓舞することがある」と考えています。そして79%が「もっと支援したいと思っている」と回答しています。非常に大きな、また良い変化がこのような認知症フレンドリーなプログラムによってもたらされています。

 しかし、ここで立ち止まってはいけません。認知症サポーター、それからキャラバン・メイトのプログラムは支援の輪をさらに広げ、認知症の人をサポートしていく必要があります。

 ボランティア活動も重要です。私たちは「サイド・バイ・サイド」というボランティアプログラムを新設しました。認知症になって孤独を感じている1人に対して、ボランティア1人が友人のように寄り添います。当事者の趣味や嗜好(しこう)に合わせて、同じ嗜好を持ったボランティア、もしくは関心を持っているボランティアを組み合わせるのです。

 この2人が「友人」になって、ボランティアは定期的に認知症の人のもとを訪問します。普段、当事者一人ではできないと思っていることを、このボランティアが支援して一緒に行動します。

 サイド・バイ・サイドというボランティア活動もそうですが、人々が社会に何か違いをもたらしたいと思っているなら、その人々の熱意を使わせていただきます。ボランティアと認知症の人との、1対1のサポートプログラムは「ミニ・コミュニティー」と言えるのではないでしょうか。

 もう一つ、ビジネスの世界でどのような活動がなされているのかをお話ししたいと思います。私たちが自宅で安心して生活を送れるのも、こういった人々のおかげです。

 その一つが、ガス会社の「ブリティッシュ・ガス」です。誰の家にもガスコンロやボイラーがあります。この設置や敷設工事をする作業員は、工事で各家庭を訪れるのですが、認知症の人はブリティッシュ・ガスの作業員が、なぜ自宅に来ているのか、たまにわからなくなることがあります。

 そこで、ブリティッシュ・ガスが認知症の人の自宅に行った場合、なぜ、それだけの料金が必要なのか。また、なぜ作業員が来ているのかをきちんと説明できるように、各作業員の認知症に対する知識を高める研修を行っています。これによって安心・安全で、またわかりやすい料金でサービスを提供できるようにしています。

 もう一つが、食品スーパー「イースト・オブ・イングランド・コープ」の事例です。右側に写真が載っていますが、若い男性が特殊なスーツを着ています。これを着れば、年老いたときに体がどのような状況になるのかを体験することができます。つまり、認知症の人が買い物に行くことを、身をもって体験することができるのです。商品の陳列、棚の場所や、商品の配置を知る上で有効です。

 また、掲示板に関しても工夫が凝らされています。認知症の人は小銭の識別が不得意です。認知症の人がレジで支払いをする時、小銭の識別で混乱し戸惑ってしまうことがよくあります。その人の後ろにはたくさんの行列……。そうなったときに、認知症の人をせかしたりするのではなく、後ろに並んでいる客たちに、別のレジに移動してもらうことにしました。それによって認知症の人も混乱することなく、安心して買い物をすることができるという試みです。

 認知症にやさしい社会をつくるという事例の幾つかをご紹介しました。きちんとやることが大変重要だと私は感じています。

 ここで、認知症フレンドリー・コミュニティーを目指す場合のBSI(英国規格協会)による実施基準を紹介したいと思います。自治体・地域として何をしなければならないのかということを、きちんと理解してもらわなければなりません。看板を書き換えればいいというだけではありません。現実的に差をもたらすことをしなければなりません。

 日本にもJIS規格というのがありますが、BSIというのも独立した組織でISOの一部です。これにはいくつかの要素があります。自治体として認知症フレンドリー・コミュニティーを名乗る場合、また認知症フレンドリー・プログラムを登録する際には、規格を満たしていかなければなりません。これからBSIの実施基準を七つご紹介します。進捗(しんちょく)を、きっちりと実現していくこと、そして、今後正しくプログラムを行っていくに当たっての実施基準です。

 第1は、自治体の内部の態勢をきっちりと整えることです。そして持続可能な認知症フレンドリー・コミュニティーを構築していくことです。つまり、今、認知症フレンドリー・コミュニティーをつくったとしても、将来、それが消滅してはなりません。持続可能であるということが大変重要です。

 第2に、この取り組みを前進させるための担当者を特定することです。誰もが手を上げるでしょうが、責任を持ったコーディネーター役がいなければ、活動は空中分解してしまいます。

 第3は実施計画を作成することです。つまり、認知症に対する啓蒙プランを策定することです。きちんと関心を持っている方たちを巻き込み、ビジネスの分野やスポーツセンターなど、さまざまな分野でどのようなプログラムを提供するのかというアイデアを整理整頓する必要があります。

 第4は、認知症の人たちの声を聞くことです。これが「認知症宣言」につながるわけですが、すべてのプログラムにおいて認知症の人の声を聞くことが重要です。

 第5は啓蒙活動、広報活動の重要性です。例えば地元紙やラジオなどを通じて、認知症の啓蒙に関するプログラムを行うことを推奨します。

 第6は自治体で取り組むべき主要で現実的な優先事項を特定することです。何でもかんでもやろうということではなく、一つ二つ、強調すべきポイント、主力分野を特定することです。

 最後、第7は制度や計画を策定し、コミュニティーの進捗度合いに合わせて、それらの計画をアップデートしていくことです。

 自治体の活動として、あと二つ紹介したいと思います。一つが、ナショナル・リーダーシップ・プログラムです。首相直轄の「チャンピオン・グループ」はキャメロン首相が始めましたが、現在のメイ首相も政府としてプログラムを継続しています。

 チャンピオン・グループというのは、政財界のトップが集まったグループで、自身が関わる産業のガイドや憲章を策定します。一つ目の事例をごらんください。「認知症フレンドリー金融サービス憲章」です。銀行は24行。保険会社がこの憲章を策定しました。

 達成度の表示にはシンプルな信号機の色を使っています。赤、青、黄で、青のアクションというのは、どのような銀行の支店でも方針を特に策定することなくすぐにでも実行できるものです。例えば、銀行の中で認知症の方が戸惑っているような場合は、スタッフが近寄って「何かお手伝いしましょうか」と言うようなものです。

 黄色に関しては、企業として意思決定が必要なアクションになります。例えば、暗証番号の代わりにサインでATMカードを使えるようにするというようなことです。

 赤のアクションは最も難易度の高いアクションで、政府の法規制の変更が必要なものです。例えば、データ保護法があるために、認知症の家族の方が認知症の方の個人情報を使うことができなくなっている。そういったところは政府レベルでの法規制が必要になります。これが金融サービス憲章の事例です。

 自治体レベルでも同じように難易度を測ることができます。誰でもできるもの、もしくは企業の協力が必要なもの。そして政府の活動が必要なもの、という具合に、さまざまな憲章やガイドが、それぞれの産業別に作られています。それをこちらに載せております。

 「ウィガン認知症アクション連盟」は、地域の認知症フレンドリー活動のひとつの事例です。あまり時間がありません。本日、プリマス市の事例については後ほどご紹介があると聞いていますので、あまり、ここに時間をかけません。地元の人々が社会に違いをもたらそうということで、認知症サポーター、認知症キャラバン・メイト、それからアルツハイマー協会など、さまざまな施設を巻き込んでウィガン認知症アクション連盟を形づくっています。

 次に個々の活動について話します。個人も、また違いを生み出すことができます。こちらのスライドは、イギリスの「認知症フレンズ」のプログラム、それから日本の「認知症サポーター」「キャラバン・メイト」のプログラムの比較表になっています。ぜひ、これを後ほどごらんいただければと思います。かなり似ています。2カ国が一つずつ、同じように主導して認知症についての理解を深め、そして偏見や差別をなくしていこうという取り組みです。

 日本とイギリスは世界的なレベルでもリーダーシップを発揮できる立場にいます。両国は昨年、認知症親善大使を任命しました。日本は登山家の三浦雄一郎さんで、エベレストに80歳で登られた方です。年齢はバリアーにはならないということを彼自身が具現化していると思います。三浦さんが認知症サポーターの親善大使になりました。

 キャリー・マリガンさんはハリウッドでも活躍している女優です。英国ウェールズに住んでいる祖母が認知症になって、今回、英国の親善大使に任命されています。

 この三浦さんとマリガンさんがグローバルな活動を行っています。認知症サーターは日本から始まりイギリスに渡り、そしていま、このプログラムは世界中に広がっています。我々は、コミュニティーに違いをもたらすことができます。日本から学び、イギリスから学び、我々のコミュニティーも認知症フレンドリー・コミュニティーにしていこうという取り組みが世界的に広がっているのです。

 本日は、ご清聴ありがとうございました。私からイギリスにおいての活動紹介をさせていただきました。まず最初に、プログラムの中に認知症の方を巻き込むことが重要です。認知症の方を中心に据えたプログラムづくりが必要です。また優れた組織、態勢が必要です。何をやりたいのか、優先順位を決めることが必要です。またPR活動も怠らず、声を上げていくことが重要です。

 そして、朝日新聞のようなリーダーシップが大変重要です。新聞や各メディアが我々の活動をサポートしてくれれば、市民の意識を変えることにもつながります。何百万人という我々のコミュニティーのなかで暮らす認知症の人たちの生活を変えていくことができます。

 ありがとうございました。

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