定期テスト、受験、部活の大会、就活……10代から20代にかけて、大切なイベントが目白押しです。自分の100%の力を発揮したいときに、女の子たちには気になることがあります。「『月経』が重なってしまったら、どうしよう」。

 月経にまつわることは「みんなつらいから、我慢しなくてはいけない」と思いがちだけれど、それって本当なのでしょうか? 月経前にからだやこころの調子が不安定になる「月経前症候群(PMS)」も例外ではありません。痛みや苦しみに対処するだけではなく、自分の体をコントロールするという選択肢を見落としがちです。

 私が小学生の頃、保健の授業では、月経をはじめ女性に起こる体の変化は、いつか子どもを産む女の子にとって大切な現象だから、喜んで受け入れよう、と教えられました。月経痛がひどいときも、養護教諭や母は「女の子はみんなつらいものだからねえ」と言いました。「女の子にとって月経は不可避。我慢しなければいけないもの」という認識を持ったのはこの頃だったと思います。

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 高校3年生になる頃、10年ほど前のことです。1カ月に1度、月経の期間ではないのに、どうしようもなく憂鬱(ゆううつ)な気持ちになり、訳もなく涙が出てくるようになりました。イライラして、耳をふさいだように自分の呼吸の音しか聞こえなくなることも。問題集にも手をつけられず、自分が思っている通りに人と接することもできず、更に自分が嫌になる――毎月何かが、私の心のゆらぎを増幅させているようでした。

これから大人になっていく女の子たちへ 月経など女性の体のリズムに伴う「痛み」「不安」……自分の体のことなのに、仕方ないと無意識に我慢してしまっていませんか? 大学受験を機にPMSと診断された記者の体験をもとに、「自分の体と折り合いをつける」選択を考えます。

 インターネットで調べてみると、「月経前症候群(PMS)」という言葉を見つけました。

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 PMSは「Premenstrual Syndrome」の略です。明確な原因はわかっていませんが、月経の10~数日ほど前から、黄体ホルモンの高まりとともに現れる症状群とされています。

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 PMSなど月経にまつわる症状に詳しい日本家族計画協会の北村邦夫理事長は、略称をつかって「身体的(Physical)」、「精神的(Mental)」、「社会的(Social)」に起こる諸症状としてとらえることもできる、といいます。「勉強に身が入らない、人間関係に支障をきたす、ということもPMSの症状のひとつです」。PMSに伴う症状の緩和には、臨床経験での効果から、低用量ピルなど女性ホルモン剤を処方する産婦人科医は少なくありません。

 PMSに比べて精神的な症状がより重い場合をPMDD(月経前気分不快障害)ともいいます。

 当時私が感じたことは二つ。月経は「我慢しなければならず、喜んで受け入れなければないもの」なのに、うまく対処できない自分の情けなさ。もう一つは低用量ピルへの抵抗感です。ピルには「避妊」というイメージを強く感じていたため、親が知ったら悲しい思いをするのではないか。自分の一番内側のことを、誰かに相談しようと思うことができませんでした。

 そうしているうちに、またあの時期がきました。受験への焦りと戸惑い、いら立ちでごちゃごちゃになって、学校帰り、婦人科の病院に駆け込みました。

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 診察してくれたのは50代くらいの男性の医師で、半べそでぽつりぽつり話す私の話を聞いてくれました。「低用量ピルを飲んで、月経のリズムをコントロールしましょう。お母さんと一緒に来られるかね?」。

 ――婦人科で説明を受けているときも、当時40代の母は「そうなんですか」と言うばかり。会計の間も、母の顔を見ることができませんでした。帰り際、「おばあちゃんは心配するで、言わん方がいいよ」、そう言われたことだけ覚えています。なんだかとても親不孝なことをお願いしてしまったんだと思いました。

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 低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンのバランスを整えて、排卵を抑制する薬です。避妊はもちろんのこと、月経周期を整える効果もあり、子宮内膜が厚くなるのを抑えるため、月経に伴う痛みの軽減にも使われます。

 種類も多く、効果が安定するまで2~3カ月ほどかかるため、婦人科の医師に、体質に合わせて処方してもらいます。保険の適用外です。現在は成分が低用量ピルとほぼ同じで、子宮内膜症に伴う痛みや月経困難症治療剤として保険適応のあるLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン)製剤もあります。

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 北村理事長の独自の調査によると、低用量ピルをはじめとする女性ホルモン剤を「使っている」もしくは「ぜひ使いたい」と回答した16歳~49歳の女性のうち、最も多い理由は、2004年は「避妊効果が高い」でした。2016年は「月経痛緩和や貧血予防の副効用がある」という回答が最も多くなり、近年は「自分の体をコントロールするためのもの」として認知されてきているといいます。

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 私が婦人科を受診したのは2007年、認知が変化していく間のことでした。病院は1人で通い、母ともピルの話をすることはありませんでしたが、服用を始めると、訳もなく泣けてくることはなくなりました。受験勉強真っただ中で、当然不安になる場面もありましたが、自分の体のリズムがつかみやすくなりました。生理痛も軽くなり、無事に受験も乗り越えられました。

 今振り返ると、自分で症状を調べ、婦人科に駆け込んだことは、女性の体に「自力で折り合いをつけた」初めての経験だったのだと思います。私が高校生だったあの頃と、今の高校生をとりまく認識は変わってきているかもしれませんが、みんなが「仕方ない」と無意識にふたをしてしまっていることも、もう少しうまい付き合い方があるはずです。

 母はあのときどう思っていたのだろうか、恐る恐る聞いてみると、「え、ピル飲んどったの?」。驚くべきことに、母は忘れていました。「その時は『高校生の女の子がなんでピルを』って思っとったかもしれんなあ、でも苦しいのやつらいのは、なくしてあげんといかんなあって思ったんやろうなあ。そんな大したことやないし」。母の言葉に心がゆるみました。

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 北村理事長は、月経を「生理」と呼ぶことも「月経に伴う不調があっても仕方ないという印象を与えている」と話します。「生理とは、体のはたらきを総称して呼ぶこともある。おなかが痛いことも、体のはたらきであれば、我慢しなくてはならないものと感じてしまうのでは」。また「産婦人科は妊娠や出産だけではなく、ゆりかごから墓場まで、女の子の健康をサポートするところ。受診をためらわないで」と呼びかけます。

 婦人科に足を踏み入れると、女性の体に関する情報が集まっている場所であることがわかります。大人になっても相談に行ける保健室のようです。これから大切なイベントを控えていて、不安に感じている人は早めに婦人科の医師に相談してみましょう。(野口みな子)