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 国が特定外来生物に指定している「タイワンザル」の根絶宣言が、近く和歌山県で出る見通しになった。同県を含む紀伊半島はニホンザルの最も重要な生息地の一つで、交雑に歯止めをかけるのが緊急の課題だった。長年の地道な捕獲作戦が奏功し、環境省は「和歌山でのタイワンザル根絶が確認できれば、全国での根絶につながる成果」と評価している。

 タイワンザルは台湾原産で、国内では1940~70年代に動物園から逃げ出すなどして野生化した。環境省は2005年に特定外来生物に指定し、輸入や飼育は原則禁止されている。

 和歌山県では、50年代に閉園した同県北部の動物園で飼育されていた十数匹が野生化し、03年には約300匹に増えた。ミカンやタケノコなどの農業被害も目立つようになった。

 和歌山県は駆除計画を策定し、03年から日本霊長類学会などの専門家と全頭捕獲に乗り出した。大型のおりなどを設置し、最初の約1年間で189匹を駆除した。

 08年に公表された遺伝子検査では、調査したタイワンザルの約9割がニホンザルとの交雑種と判明。ニホンザルの種の保全の観点から深刻な状況が浮き彫りになった。発信器による追跡や自動撮影カメラなどを活用してさらに捕獲を続け、12年4月までに、タイワンザルとその交雑種計366匹を駆除した。

 15年にわたる捕獲作戦に投じられた費用は約5千万円。最近5年余り、目撃例がなくなった。このため、和歌山県は「根絶できた可能性が高い」として、来月の検討会で専門家と協議し、根絶宣言の判断を行う。

 国内のタイワンザルをめぐっては、今後、伊豆大島での駆除をどう進めるかが焦点となる。同島では約80年前に動物園から20匹が逃げて繁殖。毎年数百匹の駆除を進めているが、なお約4千匹が生息する。

 また、ニホンザルの種の保全という観点からは、同じく特定外来生物の「アカゲザル」の駆除も課題となっている。千葉県ではこれまでに2千匹以上を駆除したが、地元のニホンザルの群れの中に交雑個体が見つかっている。

 国内各地で外来種のサルの調査に取り組む野生動物保護管理事務所(東京都町田市)の白井啓・獣医師は「和歌山では行政と市民、研究者が協力し、地道に調査と捕獲を進めた。交雑の危機からニホンザルを守る取り組みとして、モデルケースになる」と話す。(石倉徹也)