[PR]

伊勢たくあん(税別458円)

 たくあんなんて珍しくない? でも「伊勢たくあん」は特別です。たくあんには大きく2種あり、軟らかく甘い「東京たくあん」系が塩押したくあんと呼ばれるもの。もう一方は昔ながらの方法で大根を干してから漬ける“干したくあん”。しょっぱくて、酸っぱくて、硬い「伊勢たくあん」がその代表で、ぬかは洗い流し食すのが特徴です。

 今の季節、伊勢で見られるのが大根を干す“はさがけ”風景。2週間の天日干し後、塩、ぬか、柿の皮、ナスの葉、唐辛子の天然素材のみで漬け込み10カ月~1年熟成させれば、乳酸発酵で高まる味わいと保存性。

 伊勢が漬物向けに改良された御薗(みその)大根の産地であったことと、この地特有の北西の寒風が甘みを引き出すことでブランド化。商品としての生産が盛んになり、戦後、日本の食卓を席巻しました。ところが昭和40年代から食生活の洋風化と生産農家の後継者不足などから急速に衰退。この伊勢たくあんをつくる三井食品工業も一時は製造を休止していましたが、5年前に復活。地域の気候と食材を生かした伝統食として再認識され、本来の漬物の味を伝承しています。

採取地

ぎゅーとらハイジー店

(三重・伊勢)

0596・36・1245

デジタル余話

 貧乏長屋の連中が、お酒ではなく「お茶け」をとっくりに入れ、卵焼きの代わりに「たくあん」をお重に詰めて花見に繰り出す話は、落語「長屋の花見」。でも、この「伊勢たくあん」は普通のたくあんの倍以上のお値段。むしろ卵焼きの方が安い。その理由は、原料の希少性、天日に干す手間、漬け込み熟成期間の長さです。昨年漬けた「新もの」は毎年2月に蔵出し。お酒と一緒で、その年の出来が違うのだとか。長屋の皆さんにも食べさせたら、キリリとした塩けで「お茶け」も進み、ほかにつまみ要らずかも。

     ◇

 菅原佳己(すがわらよしみ) スーパーマーケット研究家。著書に「日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品」など。

こんなニュースも