活用広がるプロジェクションマッピング 医療や技術開発

月舘彩子
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 建物や家具などに映像を映し、立体的な映像を楽しむプロジェクションマッピング(PM)。娯楽に使われるイメージが強いこの技術だが、半導体の材料開発や医療分野などの先端研究にも利用されている。

 名古屋大学未来材料・システム研究所で結晶成長工学を研究する宇治原徹教授らの研究チームは、シリコンカーバイド(SiC)の開発にPMを取り入れている。SiCは省エネにつながる次世代パワー半導体の素材として高品質化が期待されている。

 高品質化のための実験は、2千度近い高温の炉内で10~20時間かけて行う。繊細な作業で、炉内に設置された装置の位置が数ミリずれたり、温度が数度違ったりするだけで、品質が悪くなるという。

 だが、高温の炉内がどうなっているのかは直接確認できない。そこで、人工知能(AI)で炉内の装置の位置から温度分布などを予測させて映像化。炉内部の装置の動きと同期させたPMを作って炉を覆うカバーに投影している。

 温度の低い部分は青色、高い部分は赤色で表示される。内部の状態が把握できることで、自動制御されて複雑化した材料開発で、もう一度人間の直感を働かせて実験中にも微調整することができるという。

 表示してみると、想像していなかった温度分布になっていることもある。宇治原教授は「装置を透視しているような感覚。以前はシミュレーションと実験のずれがあったが、炉の中の様子が見えるだけで、実験中にも微調整ができる」と話す。鋳造や金属のプレス加工などの装置がある工場でも応用可能だという。

のデータを立体化

 医療分野でもPMの活用が進んでいる。

 おなかに数個の小さな穴を開け、内部をビデオカメラで見ながら手術をする腹腔(ふくくう)鏡手術。おなかを切り開く開腹手術に比べて患者の体への負担が少ない一方で、視野が狭いため熟練を要する。

 国際医療福祉大学大学院の杉本真樹准教授は、腹腔鏡や胸腔(きょうくう)鏡の手術にPMを応用。0・3ミリの細かさで臓器や血管などを撮影したCTデータを立体化し、患者個人の体内を「まるで直接見えるように」投影しながら手術をする技術を開発した。

 当初は、3D画像を患者の腹部にプロジェクターを使って投影していたが、現在は医師が眼鏡型の装置を着用。装置にはカメラと赤外線センサーがついていて、眼鏡を通して患者を見ると、患者の体に、体内の臓器の画像を重ね合わせて見ることができる。この技術を、術前のシミュレーションや、手術の支援、若手医師の教育などに活用している。

 患者は一人ひとり、血管の位置や太さも違う。術前にデータを投影して腹腔鏡を入れる穴を開ける位置を決める際、臓器が透けて見えればピンポイントで決められるという。

 杉本准教授は「合併症も少なくなり、手術時間も短くなる」と話す。関東を中心に数病院の外科手術で導入されており、今後は健診分野での活用も検討中だ。撮影したMRI画像などを基に、患者が自身の体内の変化を実感できることも考えている。(月舘彩子)