【動画】ガラケー専門店がリニューアルオープン=神沢和敬撮影
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 二つ折りの携帯を、よくパカパカ開け閉めしたっけ……。日本で独自進化をとげた従来型の携帯電話「ガラケー」の中古専門店が今月15日、都内にオープンした。時代に逆行しているようだが、運営会社は「スマホが普及した今でも、実は根強いファンがいる」と力を込める。

 電気街・秋葉原の近くにある「携帯市場 神田本店」の店内には、中古ガラケーが400台以上並ぶ。

 棚には1万9980円の商品も。2011年に発売された「SH―08C」だ。iPhone登場後に市場投入され、ガラケーなのに操作はタッチパネル式の異色機種。しかし何より驚くのが、本体の裏側がヒノキ製であること。匂いをかぐと、今でもすがすがしい微香が鼻をくすぐる。

 09年にアニメ「エヴァンゲリオン」とコラボした「SH―06A NERV」も、1万7580円の値がついている。

 ただ、価格帯の中心は5千~6千円。中古スマホと比べても、格段に安い。携帯会社と契約すれば、今でも通話やデータ通信ができる。

 棚を眺めると並んでいるのは「創意工夫の歴史」だ。

 二つ折りの本体の外側にも小さなディスプレーがついた「N901iS」(05年)や、音楽ケータイをうたい本体前面に再生や選曲ボタンがついた「F902iS」(06年)などを懐かしく思う人もいるだろう。

 07年発売のシャープ製「SH903iTV」(2980円)は、ワンセグ視聴に特化。縦長の二つ折りタイプながら、大胆にも画面部分が横向きに回転して、テレビが見られる。手にとって記者も「これ、持ってた」と突然思い出した。ワンセグはあまり見なかったが、時間があれば画面をガチャガチャ回転させて遊んだ20代だった。

 スマホほど多数のアプリを追加できず、ネットやメール機能も弱いガラケーを買うのは、思い出を持つコレクターなのだろうか。

 「携帯市場」の粟津浜一社長は首を振る。同社のネット通販では、月間約3千台の中古ガラケーが売れ、その数は中古スマホに匹敵するという。

 通話だけできれば十分という高齢者のほか、多いのが40代以上のサラリーマンの購入だ。

 若い頃からガラケーを愛用し、押すだけで得意先に電話できるワンタッチボタンなど、ガラケー独特の機能を求める人がいる。また、悪質サイトを閲覧したり、内部情報が流出したりするリスクを考え、仕事中のスマホ使用を禁止している企業もあるという。

 大画面化が進むスマホと違い、ガラケーなら胸ポケットに楽に入る小型機種も多い。例えば07年に「世界最薄」をうたい発売された「P703iμ」(4980円)は、二つ折りした状態で厚さ11.4ミリ。幅も5センチに満たない。

 粟津社長は「機種ごとに個性があり、物として愛着が持てるのはスマホよりガラケー、という声も聞く。国際標準から離れた『ガラパゴス携帯』と言われもしましたが、日本の文化として見直されてもいいのでは」と話す。

 たしかにガラケーは、様々な流行や文化も生み出した。00年代初めの街中では、女子高生が大量のストラップをぶら下げていた。お気に入りのプリクラを、裏ぶたを開けないと見えない電池パックに貼り付けるのも流行した。

 店長を務める大畠志穂さん(23)は「中古ガラケーを買い取るとき、検品で裏ぶたも開くんです。所有者も忘れていた昔の彼女とのプリクラを発見、ということが、入社以来、何度もありました。さすがに勝手にはがせず、お客様に対応をおたずねしています」。

 アップルやサムスン製のスマホに押され、日本メーカーは相次いで携帯事業を縮小している。しかし、現在も使うことのできるガラケーは600機種以上。ガラパゴスだからこその魅力を求める人は、今でも確かに存在している。(信原一貴)