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 岩波新書「NHK」を著した松田浩さん(87)は、日経新聞で1962年から25年間、放送担当を務めた生き字引のような存在だ。

 73年7月。東京・渋谷のNHKにほど近い中華料理店で、記者仲間とNHKの前田義徳会長を囲んだ。3期9年にわたり会長職にあったが、確実視されていた続投を逃し、ねぎらうための宴席だった。

 「これだけは言い残したい」。最後に会長が口を開いた。「政府の介入に大きく余地を残した現行放送法の問題点を、諸君、どうか真剣に考えてくれたまえ」

 新聞記者出身の前田氏は副会長時代の63年、放送法のあり方を議論する郵政相(当時)の諮問機関に、自らが中心となって政府からの独立と財政基盤の強化をめざすNHKの方針を示した。独立行政委員会制度の導入と、支払い義務化が柱だった。結局、改正法案は廃案となった。

 志半ばでの退任。背景にはときの田中角栄政権による人事介入があった、と松田さんは言う。「前田氏の後悔を感じたよ」

 支払い義務化について松田さん…

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