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 大阪医療刑務所(堺市)の元派遣社員の男性が21日、国に対し、労働者派遣法に基づき直接採用することや200万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。同法が定める雇用安定のための措置を国が果たさなかったと主張している。

 訴えを起こしたのは大阪府阪南市の尾下佳央さん(61)。訴状などによると、尾下さんは2012年4月、同刑務所の収容者を病院などに移送する車の運転業務に就いた。刑務所が「請負契約」を結んだ会社の社員だったが、業務に関する直接の指示は刑務所の職員から受けており、偽装請負の状態だった。偽装請負は労働者の安全管理の責任があいまいになることなどから違法とされている。

 尾下さんから相談を受けた大阪労働局は昨年11月、刑務所に是正を指導。これを受け、刑務所は今年1月、直接、業務の指示ができるよう同社と「派遣契約」を結び直した。しかし3月末で契約期間が終わり、尾下さんは雇い止めに。4月以降、別会社が仕事を受けている。

 15年10月施行の改正労働者派遣法は労働者の雇用の安定を図るため、企業が偽装請負状態で働かせていた場合は労働契約の申し込みをしたものとみなし、労働者が望めば原則、直接雇用される。一方、国や自治体については「採用その他の適切な措置を講じなければならない」とするにとどめ、必ずしも直接雇われるとは限らない。

 原告側は「刑務所側はこの規定に沿って直接採用などの措置を取るべきで、そうしないのは違法だ」と主張している。

 提訴後に会見した尾下さんは「法秩序を維持するはずの法務省の違反行為は、国民の信頼を失墜させるもの。法令を順守した対応を求めたい」と語った。大阪医療刑務所は「訴状が届いておらずコメントは差し控えたい」としている。(釆沢嘉高)