[PR]

 原爆による放射線で健康を害する原爆症の認定をめぐる訴訟の判決が28日、広島地裁であった。小西洋裁判長は、認定を却下した国の処分の取り消しや損害賠償を求めた被爆者ら24人すべての請求を退けた。原告側は「裁判所は、被爆者の思いがわかっていない」と判決を批判し、控訴する意向を示した。

 当初の原告は、広島で爆心地から1・2~4・7キロの地点で被爆したか、原爆投下後11日以内に2キロ以内に立ち入って被爆した24人。それぞれ国が原爆症と「積極的に認定」するとした甲状腺機能低下症や心筋梗塞(こうそく)、白内障を発症したと主張していた。うち2人は提訴後に死亡し、遺族が継承。また半数は提訴後に国が認定申請を退けた処分を取り消しており、主に損害賠償を求めていた。

 判決は、被爆時の距離で被曝(ひばく)線量の推計値を導き出す手法を重視した点が、被爆者らが勝訴してきた従来の司法の判断枠組みと異なっている。

 その上で、甲状腺機能低下症の場合、国際放射線防護委員会(ICRP)による、一定の線量を浴びた場合に疾病を発症するとの基準を採用した。原告の主張に対しては、いずれもその数値に達していないか、達したとしても加齢によって発症することもあるなどとして、放射線により発症したとは認められないと結論づけた。このほか心筋梗塞や脳梗塞などの疾病を患う原告の訴えも同様に退けた。(小林圭)

判決への怒りあらわに

 「全否定で、ここから希望がみえない」。広島市内で開かれた報告集会で、広島訴訟の弁護団長を務める佐々木猛也弁護士は判決への怒りをあらわにした。

 2003年以降始まった原爆症認定の集団訴訟で、被爆者側は勝訴を重ねてきた。爆心地の距離から推定した被曝(ひばく)線量をベースとした、厚生労働省の審査のあり方を司法は批判。その後審査が改められた歩みを振り返り、「今回の判決は、新しい審査基準についても何ら触れず、被曝線量という数値だけを基準にしている。復古型の判決だ。今までの大きな流れから完全にずれている」と憤った。

 今回の判決では、原爆による放射線で甲状腺機能低下症を発症する場合、「4グレイ」という具体的な数値を示した。この判断について佐々木弁護士は初めて示されたものだとし、後退ぶりを皮肉った。

 弁護団は「裁判所は、広島の被爆の実相を、被爆者の苦しみを理解できていない」との声明文を発表。原告全員が控訴する方針を示した。被爆者の平均年齢は81歳超。甲状腺機能低下症などを患う原告の南石(みないし)淑江さん(73)は「控訴すると、判決にはどれくらいかかるでしょうか……」とつぶやいた。(宮川純一、宮崎園子