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 日本の野生動物のぬいぐるみで人気を集めた「やまね工房」が、11月末で生産を終えた。熟練した縫製職人を確保できなくなったためという。網走市にある直営店で在庫分を販売するだけとなり、全国から惜しむ声が寄せられている。

 やまね工房は、落合けいこさん(60)が1985年に静岡県熱海市の実家で設立した。落合さんは自然保護のボランティアをしており、資金集めのためにぬいぐるみを作ったことが創業のきっかけだった。91年には旅先の網走市で知り合った松田良枝さん(64)の協力を得て、網走湖の近くに直営店を開設した。

 ぬいぐるみは落合さんがデザインし、宇都宮市の工場で縫製と綿詰め。最後に落合さんが仕上げ、全国の自然保護センターなど約60カ所に卸してきた。看板商品のヤマネは、ホックを掛けると丸くなって「冬眠」する愛らしさが人気で、年間3万個売れたこともあったという。

 落合さんは、熟練した縫製職人がそろう国内生産にこだわった。「作る側も愛情を込めて取り組んでほしい」との思いから、モデルの動物を紹介したテレビ番組を職人に見てもらうなど、現場と何度もやり取りを重ねた。だが高い品質を支えてきた職人が高齢化し、ぬいぐるみ製作を続けられなくなったという。

 「身近な生き物について考えてほしくて始めた仕事だが、伝統工芸ではないので限界はあった。やまね工房のぬいぐるみは役割を終えたのだと思う」と落合さんは話す。10月中旬にブログで生産終了を公表すると、「とても残念です。我が家には39匹のももんがとやまね、ウサギが毎日楽しく暮らしております」「日本の里山が消えていくように、寂しい限り」など、惜しむメールが続々と届いた。

 山梨県北杜市の「やまねミュージアム」は、やまね工房のヤマネだけを置いてきた。館長を務める湊秋作・関西学院大教授(65)は「年間約2万人のミュージアム来館者のほとんどが、ヤマネのぬいぐるみを買って帰る。単なる商品ではなく、落合さんの魂がこもった作品であり、残念でならない」と話した。

 卸売りは今年6月に終了しており、既に全国のほとんどの店頭から姿を消した。網走店は来春から落合さんが開発した花の種などを販売するといい、今後も「やまね工房」のブランドは残る予定だ。(宮永敏明)