[PR]

 箱根駅伝で20年ぶりの総合優勝を目指す神奈川大の二枚看板、1区の山藤(やまとう)篤司(3年=愛知学院愛知高)と2区の鈴木健吾(4年=愛媛・宇和島東高)の胃袋を支えるおばちゃんがいる。横浜市の神奈川大キャンパスのほど近くで喫茶店「ソフト珈琲」を営む斉藤孝子さん(75)だ。レース前、斉藤さんは2人とそれぞれ約束を交わした。

 喫茶店だが、昼は洋食を中心に種類豊富なランチを出す。「ボリュームがすごくておいしい。よく山藤と2人で行き、おばちゃんにとてもお世話になっています」と鈴木は話す。

選手の胃袋支えて朝昼晩

 48年前の創業以来、斉藤さんはずっとソフト珈琲を切り盛りする。1989年、今の大後栄治監督が神奈川大のコーチに就任した直後、「選手たちの食事の面倒を見て欲しい」と頼まれた。当時の神奈川大はまだ駅伝チームの寮もなく、アパート暮らしの学生が多かった。毎年、12月中旬から箱根駅伝が終わる1月3日まで、部員たちの朝昼晩の食事を出してきた。

 97、98年に神奈川大が連覇したときは優勝報告会にも呼ばれた。「当時の学生たちは体が大きく、いかにもパワフルだった。今の学生は小さくて、どこに走るエネルギーが隠されているのかという感じ」

Wエースは「孫みたい」

 158センチの山藤、163センチの鈴木を見ていると心配になることもあるという。その斉藤さん自身がボリュームたっぷりのランチを出すことで、まさに2人に「走るエネルギー」を提供している。山藤は焼き肉定食が好きで、鈴木の好物はオムライス。レース前には験担ぎでカツカレーを食べることもある。

 そんな「孫みたいな2人」と、斉藤さんは今大会の直前、それぞれ約束を交わした。

山藤との約束は

 山藤とは、「今年はたくさんテレビに映る」。斉藤さんの店にも飾られている大会の公式ポスターには、前回大会の1区の走者たちが集団で走っている写真が掲載されている。だが集団の後方に位置していた山藤は顔と足が辛うじて見えているだけ。「あんた、体が小さいんだから、前に出ないと映らないわよ」と発破をかける斉藤さんに、山藤は「今年は目立つ」と誓った。

鈴木との約束は

 エースの鈴木とは、「沿道で応援する自分にピースサインを送ってもらう」。2区の約7キロ付近にある神奈川警察署の向かい側の沿道で応援すると伝えた斉藤さんに、鈴木は「目立つ帽子をかぶって、身を乗り出して手を振ってください。そしたら僕がピースサインを出します」と約束した。

思い出すのは98年V

 98年の優勝報告会とパレードの華やかさを、斉藤さんは今でもはっきりと覚えている。「やっぱり勝ってくれないと景気が悪い。今年は久々のチャンスだと、期待しています」。近くの六角橋商店街には「箱根駅伝 がんばれ神奈川大学」の大横断幕も掲げられた。地元のみんなが20年ぶりの悲願を待っている。(平井隆介