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 家族や友達、好きな人に贈るプレゼント。最近の若者は、男女を問わず割にマメに贈ったり贈られたりを楽しんでいるようです。オリジナル動画を作ったり、サプライズ演出にこだわったり。手法は昔と変わっても、根底にあるのは相手を思いやる気持ち。漫画「あさきゆめみし」の作者大和和紀さんに、源氏物語の世界の贈り物のお話や、若い人へのメッセージを伺いました。

――源氏物語の贈り物のシーンで一番心に残っているのは何ですか。

 光源氏から女性への贈り物というのもたくさんありますが、とても印象に残っているのは、紫の上と秋好(あきこのむ)中宮とのやりとりです。光源氏は六条院という大きな御殿を建て、それぞれの区画を春夏秋冬に分けて、それぞれ女性を住まわせるのですが、引っ越しをしたのが秋。秋の御殿に住む秋好中宮が、春の御殿の紫の上に「心から春まつ園はわがやどの 紅葉を風のつてにだに見よ(春をごひいきのあなた せめてわがやの秋のみごとさを 風のたよりにでもごらんください)」という文を、紅葉や秋の美しい花々につけて贈ります。そのお使者の着物の色と紅葉の配色がすばらしく、あちらの御殿から橋を渡って歩いてくる姿が、なんとも言えずハイセンスで美しい。

 それに対して紫の上は「風に散る紅葉はかるし春の色を 岩根の松にかけてこそ見め(風に散る紅葉なんて軽いものですわ 春の美しさをどっしりした岩に根ざすこの松の緑に見ていただきたいものです)」という返事を、松の木を盆栽風にして美しく作ったものと一緒に贈ります。奥ゆかしくて、雅(みやび)を感じさせます。(源氏物語第21帖(じょう)/あさきゆめみし単行本第6部其(その)3)

 その話はさらに続きます。春に宴(うたげ)を開いた紫の上が、金の瓶(かめ)に山吹の花、銀の瓶に桜の花を用意し、それぞれ蝶(ちょう)と小鳥に扮した子どもたちと共に船に乗せて、宴に参加できなかった秋好中宮に贈ります。その様子が本当に美しくて印象に残っています。贅沢(ぜいたく)なプレゼントですよね。(源氏物語第24帖/あさきゆめみし単行本第6部其4)

――当時はどんなものをよく贈っていたのでしょうか。

 光源氏はお金持ちだから、いろんなものをあつらえて、美しく飾って女性にプレゼントする箇所がいくつか出てきますが、あの当時の贈り物は、着物や布が多かったようです。

――光源氏が、女性たちそれぞれに合った、お正月の衣装を見立てる場面もありますね。

 はい。あれもプレゼントですね。プレゼントにする以外に、例えば褒賞として着ているものをあげたりもします。布類はお金にかえることができるので、よくプレゼントにされたようです。当時は今と違って品物がたくさんありませんから、大事な人には、家宝の楽器や文箱(ふばこ)、硯(すずり)などをあげていたそうです。

――そういえば、末摘花(すえつむはな)の君は侍従と別れるとき、美しいと言われた自分の黒髪で作ったかもじをあげていましたね。家にはもう何も残ってないからと(源氏物語第15帖/あさきゆめみし単行本第5部其1)。

 そうですね。ちなみに末摘花はセンスが悪いことで有名なんですよ。源氏にも古めかしい衣装をよこすっていうのでね。「え、これ着るの?」みたいな……。当時、夫の衣装を整えるのは正妻だけができるものでした。出過ぎたプレゼントもマイナスなんですね。

――手紙(文(ふみ))も重要でしたよね。

 ものを贈る際も、和歌を書いた文をつけました。普通の文にも花をつけたりね。その時の自分の気持ちを表す花であったり、相手の心を思いやるものであったり。パーッとしたお花ではなく、ちょっとしおれたものにして、しょんぼりしていますという気持ちを表現したりとかね。

――凝ってますね。

 文の結び方も表現のひとつ。とても怒っている時には、上下をねじったりしました。紙の色もセンスが問われます。色だけでなく、継ぎ紙にしてみたりね。今でも贈り物にはセンスが求められますよね。ちょっと外してる、みたいなものをもらうと残念なプレゼントになってしまいます。

――センスですか。

 光源氏はセンスが抜群でした。それが、称賛される一つの理由ですね。行き届いているというのかしら。

――もし現代に置き換えたとしたら、光源氏はどんな贈り物をしているでしょう。

 着物にあたるところは、宝石に…

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