「職業はいくつあってもいいんだよ。大学に行けば、視野が広がるよ」。高校2年の時、将棋を優先して大学に進学するかどうか悩んだ私に、先生がかけてくれた言葉です。「世界が広がるってどんなことだろう」と好奇心がわき、大学を目指そうと思いました。

 受験は、中学受験が初めてでした。塾へは行かず、自分で教材を買って勉強しました。参考書を読んで問題を解いて、間違えたら解説を読む。達成感があって、ゲームのような感覚でした。

 中学、高校時代に心がけていたのは、学校の授業に集中することです。将棋とタレントの仕事もあったので、学校にいる時は「今しか勉強する時間はない」と思って、真剣に授業を受けるようにしていました。

 昨年、センター試験を受けた前夜、初めて眠れずに焦る経験をしました。自信はあったのに、思ったような点は取れませんでした。一度きりだから緊張していたのかもしれません。

 その後の2次試験は落ち着いて受けられましたが、第1志望の大学は不合格。将棋部が強い早稲田大に入学しました。今は経済の授業が楽しくて、自分の労働と対価、その価値について考えています。授業後は将棋部に通っています。

 受験は出題範囲を勉強すれば、結果が出せるのがいいです。将棋はどんなに勉強しても、それが対局に生きるとは限らない。範囲が無限なんです。

 ただ、受験を経験して気づいたのは、勉強も将棋も実践が大事だということ。授業を聞いて、頭で理解したつもりでいても、問題を解かなければわかったことにはなりません。本番では緊張や思わぬ間違いもします。だから、合格点以上をとれるように準備することが重要だと思います。(聞き手・斉藤寛子)

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 〈竹俣紅(べに)〉 1998年、東京生まれ。女流棋士。6歳で将棋を始め、14歳でプロ入りした。森内俊之九段に師事。2017年3月に渋谷教育学園渋谷高校を卒業後、早稲田大政治経済学部に入学。タレントとしてテレビ番組などで活躍するほか、18年1月に初のフォトエッセー「紅本」を発売する。