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 国道なのに、道幅が狭いなど通行が困難で「酷道(こくどう)」と揶揄(やゆ)される道。その魅力はどこにあるのでしょうか。国道の愛好家として知られ、「国道者」「ふしぎな国道」といった著書がある佐藤健太郎さん(47)に話を聞きました。

 ――自ら本を書くぐらい、国道にはまっているんですね。

 「はい、車の免許をとった25歳ぐらいの頃から国道に興味を持ち、これまでに32万キロほど走りました。本業はサイエンスライターで、もともとは医薬品メーカーで研究の仕事をしていたのですが、国道のように番号が1から順についているのが好きなんですね。周期表も1から順についていますし。国道は欠番があるのですが、なぜ欠けているのかなど、謎を解いていくのが面白かったんです」

 ――そんなはまり方があるんですね。

 「コレクター意識があるんでしょうね。研究者にはそんな人が多いと思いますよ」

 ――しかし、32万キロも走るとは。

 「以前は、休日はほとんど国道のドライブに出かけていましたね。地方では道の駅などで車中泊することもあるのですが、何回か警察に職務質問されてしまいました。長距離の運転は疲れるし危険な道もあるのに、よく走りましたね」

 ――そこまでするほどの魅力はどこに。

 「謎とロマンを秘めているところですかね。国道って、どこまでいくか、普段はみんな気にしないじゃないですか。例えば国道254号は東京のど真ん中から出発するのですが、埼玉や群馬を越えて、200キロ先の長野県松本市までいくんです。東京都内の立派だった道路が、センターラインのない細い道になっていく。実際に走ってみて、そんなことを知れるのが楽しいですね。

【動画】国道425号を走る

 長崎にある国道324号はなぜアーケードを通るのか。なぜ階段が国道に指定されているのか。謎もたくさんあり、それを調べていくのも楽しい。瀬戸大橋や伊豆にある国道414号のループ橋など、よくこんなものをつくったなあ、と感心することも多いですね」

 ――「酷道」という言葉も目にします。

 「『国道なのにこんなに悲惨な道がある』というのがネタとして面白いので、インターネットで広がりました。ここ数年、テレビでも取りあげられるようになり、さらに注目されることになったみたいです」

 ――佐藤さんからみた「酷道」の魅力とは。

 「タイムトラベルのような感覚を味わえることですかね。今は立派な道路ばかりなのに、『酷道』と呼ばれるような細い道を走っていくと、数十年前から変わらないような日本の原風景に出会えるんです。

 静岡の国道362号を走っていたら、突然、きれいな茶畑が広がっていて、こういうところのために、道はつながっているんだなあ、と。日本の仕組みを自分の目で見られたような気になります。あまりに酷(ひど)い道は危ないので、推奨はできませんが」

 ――おすすめの国道はありますか。

 「眺めがいいのは、(広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ)しまなみ海道を走る国道317号ですね。瀬戸内海の島々を渡っていく風景は、なかなか見られません。島に一つずつ立ち寄って、それぞれの個性を感じながら走るのも楽しいですよ。東日本なら国道292号ですね。草津から志賀高原にいく道ですが、白樺(しらかば)林の高原や温泉があり、紅葉もとってもきれいです」

 ――まだまだ国道を走り続けますか。

 「(起点から終点までの)全線を走っているわけではありませんが、国道459本のうち、これまでに数本を除いて走りました。まだ数本残っていますが、まあ、鉄道マニアが全ての路線に乗ったら、一気に老け込んだという話もありますし。いま3歳の娘が大きくなったらドライブに連れていって、『この道はこうやってできたんだよ』とか話しながら走りたいです」

     ◇

 さとう・けんたろう 1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院を卒業後、医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教などを経て、現在はサイエンスライター。

全国“酷道"マップ

朝日新聞記者が走った国道425号のほか、各地には多くの「酷道」や変わった国道が点在している。山あい・海沿い……過酷すぎる全国有数の地点をたどる。