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 「うちにはサンタクロースは来ない」。生活が厳しく、やむなく子どもに言った――。そんな家庭にサンタの思い出を届けたいと活動する人たちがいる。

 5歳と2歳の息子2人を育てる大阪市の女性(34)は昨年6月、交通事故で夫を亡くした。パートを始めたが収入は以前の10分の1。貯金を崩して暮らす。

 一昨年までのクリスマスイブはサラダやフライドチキンを作り、家族でケーキを囲んで過ごした。枕元には夫がプレゼントを置いていた。だが、昨年は料理を作る気力もなく、プレゼントもスーパーの詰め合わせのお菓子が精いっぱい。翌朝、サンタを信じる長男がつぶやいた、「サンタさんにお礼が言えなかった」という言葉が心に残る。

 今年、シングルマザーの支援団体を通じ、全国各地の家庭にサンタを派遣しているNPO「チャリティーサンタ」(東京)の活動を知った。「息子を喜ばせたい」と申し込んだ。

 NPOではサンタに扮したボランティアをクリスマスイブの午後5~9時ごろに派遣、各家庭が用意したプレゼントを子どもに渡す。寄付金として1軒当たり原則2千円を受け取るが、経済的に厳しい家庭は無料とし、プレゼントもNPO側が用意している。

 「サンタに会った瞬間の子どもたちの喜んだ顔が忘れられない」。「サンタと『好き嫌いしないで食べる』と指きりげんまんをした子どもが、今日もちゃんとごはんを食べた」などの反響があったという。

 女性はサンタに「天国のパパ」からの手紙を託すつもりだ。「パパはおそらのうえからいつもみまもっているよ」

 大阪市で息子(4)と2人で暮らす女性(49)も申し込んだ。未婚で息子を出産。指定難病の持病で全身が痛む。入院して、生後4カ月の息子を1カ月乳児院に預けたこともある。25年間続けたテキスタイルデザインの仕事も体調を崩して息子が1歳のときに辞め、ギリギリの生活を送ってきた。

 これまでプレゼントは姉や知人からの贈り物で代用してきた。姉にもらったツリーを息子と2人で眺めるのがささやかな幸せだ。

 最近特にサンタを信じている息子。2人で空に向かって「サンタさーん、今日は自分でごはんを食べて、お着替えもしたで」と報告している。当日は、息子の喜ぶ顔を見るのが楽しみだという。

 「チャリティーサンタ」は、寄付金で途上国などの教育支援をすることを目的に発足。サンタがプレゼントを届けるアイデアは代表理事の清輔(きよすけ)夏輝さん(33)が思いつき、「あなたも誰かのサンタクロース」を合言葉に、寄付やボランティアを広く募ってきた。

 発足した2008年から16年までの9年間で延べ1万1795人のボランティアが参加し、8730軒、2万1882人の子どもの元を訪れた。

 だが、15年に利用者に実施した調査をきっかけに、経済的に苦しい家庭には自分たちの活動が届いていないことが判明。そうした家庭の子どもにも無償でプレゼントとサンタとの思い出を届けようと、基金(1口3千円~)を創設した。

 今年9月には、NPO「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)と協力してシングルマザーに調査を実施(103人が回答)。3割強が「クリスマスなんて来ないで欲しい」と思ったことがあり、約1割が「うちにサンタは来ない」と子どもに伝えていたと回答した。

 清輔さんは「子どもたちが1年で最も楽しみにしている日に寄付という形で協力いただければ。みなさんの応援をプレゼントとして届けます」と呼びかけている。支援の詳細はチャリティーサンタのホームページ(https://charity-santa.org/別ウインドウで開きます)で。(寺尾佳恵)