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 毎年冬になるとインフルエンザの流行シーズンになります。インフルエンザウイルスの特徴は変異が生じやすいことです。病原性が高い新型ウイルスが人から人への感染を起こすようになった場合、世界的に大きな被害をもたらすことが心配されています。

 今まで大きな被害の出た世界的流行としては、1918年に流行したスペイン風邪(世界中で4千万~5千万人が死亡)が最も有名です。世界的流行が記憶に新しい2009年の新型インフルエンザは、幸いなことにあまり病原性が高くありませんでした。しかし、今後いつまた新たな変異株が流行するかもしれず、用心しておかなくてはいけません。

 今まで人類は感染症とずっと闘ってきました。人類が狩猟採集をしていた時代には、感染が起こっても、その部族内で流行は途絶えてしまい、命を落とす人の数もさほど多くはなかったことでしょう。

 農耕牧畜によって人が定住生活をするようになると、やがて集落が町、都市へと発展し、人口が増えていきます。文明が栄えて都市間で人が往来するようになると、たくさんの人が亡くなるような感染症の大流行が起こるようになったと考えられます。人口密度が高い都市、中でも不衛生な環境となりやすいスラムには、様々な感染症が流行する条件がそろっていました。

 ヨーロッパでは、残された記録からペストや天然痘、はしか、結核、コレラなど様々な感染症が大流行し、都市に住む多くの人が死亡した様子がうかがえます。

 15世紀にはじまる大航海時代には、ヨーロッパからアフリカ、アジア、アメリカ大陸へと人々が渡り、病原体も運び込まれました。病原体はアメリカ大陸に栄えていたアステカ王国やインカ帝国にも持ち込まれ、それらの文明の滅亡に加担したと考えられています。

 感染症には、人以外の動物のみがかかるもの▽動物から人にはうつるが、人から人にはほとんどうつらないもの▽人から人にうつるものがあります。ダニやノミ、蚊を介してうつるものも困りますが、何といっても世界的に大流行するのは人から人にうつる感染症でしょう。

 現代文明の発達によって毎日大量の人や物資が世界中を飛び回り、地球のどこにでも1~2日で行けるという便利な世界を私たちは手にしました。私たちは今、今日の地域の問題が明日は世界の問題になるかもしれない時代に生きているのです。

 感染症が一部族の問題で終わった狩猟採集の時代には戻れません。「地球はワンワールド」、世界中の人々が力を合わせて感染症への理解を深め、自分自身を守り、社会を守ることが求められています。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座教授 萱場広之)