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希望はどこに ソングライター・「いきものがかり」リーダー 水野良樹さん

 誰もが同じ夢を語れない時代です。だからこそ、分断した人たちの中間に届けられた歌が、共存するきっかけに、わかり合えない人とつながるヒントになれないか。「いきものがかり」の水野良樹さん(35)が語る歌の持つ可能性、歌を作る意味は、先が見えずにわかり合えない時代の「希望」のありかを示しています。

 新年のシリーズ企画「希望はどこに」では、今回の水野さんをはじめ、20~40代の8人に日替わりで登場していただきます。平成生まれの直木賞作家、朝井リョウさんの寄稿や、2017年のベストセラー「漫画 君たちはどう生きるか」の羽賀翔一さんの書き下ろしイラストもお届けします。

     ◇

 歌って何だろう。ずっと考えてきました。

 いま、同じ夢であるとか、ある種の共同体意識を、持ちにくい時代になっています。「みんな一緒だよね」と言い合えていた時代はとうの昔に終わり、いまは「いや、それぞれだよね」という前提が以前より広く認識されています。その人が身を置く政治的なスタンス、経済的な環境によっては、政策AかBかで、苦しい立場に追いやられ、極端な話、生死のどちらか一方を迫られるような人がいます。人々は、主義主張をとげとげしい言葉で叫んだり、そのような言説をせざるをえない状況を強いられたりしているんじゃないでしょうか。

 そんな時代に、歌は中間に立つものになり得る。僕の理想論ですが、政治や経済の問題でのっぴきならない緊張を抱えた両者の間に文化の媒介物を置いて、共存するきっかけにならないか。分かり合えない人とつながるヒントを生み出すものが大衆音楽ではないか、と。それが歌の持つ可能性で、歌を作る意味なのかな、といまは思っています。

 「いきものがかり」をやってきて、そんなことを考えるタイミングがたくさん訪れました。「ありがとう」は、最初は平坦(へいたん)な曲を作ってしまったかもしれない、と不安でした。でも、NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」の主題歌となり、普段はJポップを聴かない人にも知ってもらえました。奥さまの葬儀で出棺の時にこの歌をかけてくれた人がいます。愛する人への気持ちをこの歌に乗せて、人生の大切な瞬間に流してくれました。歌が誰かのとてもパーソナルな部分につながっている。

 自分の部屋で作ったものが、ある人の一生の思い出につながる。僕らの歌が、僕らの知らない色々な場所でつながりを生み出しているかもしれない。歌は自分の気持ちを表現するためだけのものではない。歌に価値を与えてくれるのは他者であり、他者にとっての意味に基準を置きたいと考えるようになりました。

 東日本大震災が起きたときは、ものをつくる人間がどういう発信をすればいいのか、僕もすごく悩みました。僕らの「YELL(エール)」という曲には、「サヨナラは悲しい言葉じゃない」という歌詞があります。とても悲劇的な形でサヨナラを目の当たりにしている人たちがたくさんいる中で、そういう言葉を歌っていいんだろうかと、一瞬、情けないことに迷いました。

被災地で歌われたYELL
「歌は誠実に、感情を押しつけることなく、その人たちに寄り添っていました」

 そんな時、被災地で中学生がこ…

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