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平成とは 第1部:時代の転機 (4)心のケアの時代

 1993(平成5)年。精神科医の小西聖子(たかこ)(現・武蔵野大教授、63)は、東京医科歯科大に誕生した「犯罪被害者相談室」でカウンセリングを始めた。しばらく電話も鳴らなかったので、アメリカの被害者支援組織のマニュアルを読んでいると、事件後の症状にPTSDのことが書いてあった。

 PTSD(Posttraumatic Stress Disorder 心的外傷後ストレス障害)は80年、アメリカ精神医学会の診断統計マニュアルに初めて登場した。きっかけはベトナム戦争。帰還兵の攻撃的言動など心の後遺症が社会に突きつけられた。

 女性運動によって、性暴力被害の深刻さも明るみに出た。トラウマ体験をした人に、その体験が繰り返しよみがえる、不眠が続いたり怒りが爆発したり過覚醒になる、刺激となるものを回避するなどの症状が出て長引くことがある。そんなことが、知られるようになった。

 小西も診断基準は知っていた。相談室に交通事故遺族や性暴力被害者が訪れるようになって、ほんとうにそうなんだと驚き、納得した。相談は次第に増え、小西は急いでアメリカに学びに出かけた。帰国して1年後、阪神大震災が起きた。

 「神戸に行くからアレンジしてほしい。あなたは行かないの?」とアメリカの被害者支援組織から電話で言われて初めて、現地入りを考えた。精神科医は患者が来るのを待つのが伝統的スタイルだったからだ。

 関西に行くと、世界の著名なトラウマ研究者たちが来ていた。広島の被爆者調査で知られるロバート・リフトン、カンボジア難民支援に携わったリチャード・モリカ……。

 大都市が破壊され6千人以上が亡くなった阪神大震災は、世界から多数の救援者が駆けつけた。アクセスは比較的よく、外国語が話せる住民が多い。来日した識者からもPTSDの情報が報道陣に伝えられた。

 紙のように曲がり、切れた高速道路、燃え続ける住宅地、家の下敷きになり救出される人……。信じられない光景や、焼け跡で手を合わせる人の姿が連日報じられ、見ている人も衝撃を受けた。「心の傷」の話がしみていく素地があった。

■専門用語「PTSD」、一般に…

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