拡大する写真・図版 内科の大部屋から緩和ケア病棟の個室に移って間もないころの父。ここの病院での入院期間が1カ月に近づいたころから、個室に入りたいと言い出していた。取材の移動中に立ち寄った私に「テレビが見放題になったのが本当にうれしい。ありがとう、ありがとう」と満面の笑みを見せた=東京都品川区

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もうすぐ父が死んでしまうので:1(マンスリーコラム)

 スーーッ…………、スーーッ…………。

 だんだん呼吸の間隔が長くなっていく父のベッドサイドで、いとこ(50)が懐かしい話を始めた。

 幼いころ、毎年夏になると、父が勤める信用金庫の保養所があった千葉県の海で、よく遊んだこと。大学時代の週末は都内の実家に集まり、ダジャレを連発する父と酒盛りやマージャンをしたこと。

 個室に持ち込んだCDプレーヤーは、パリ在住でソプラノ歌手の妹(40)の歌声を流し続けていた。彼女はまだ日本に向かう飛行機の中だ。間に合ってくれるといいのだが。

 私と夫(46)といとこは、こっそり持ち込んだビールとワインでほろ酔い気分だった。この緩和ケア病棟にきて約1カ月。仲良くなったナースたちがモルヒネ投与量を確認する程度しか顔を見せないのは、私たちの“悪事”を見逃してくれているのかもしれない。

 私は、父が昔ゴルフ練習場の2階部分から落ちて肩を骨折した話をした。「打ち損ねて転がったボールを追いかけたせい」というエピソードを明かすと、夫は大笑いした。

 「お父さんも楽しんでる?」と私が耳元でささやき、ずれかけた酸素マスクを直すたび、父は一瞬、強く目をつむって顔をゆがませ、笑ってくれた。

 日付が変わり、夫は自宅へ戻った。泊まり込む予定の私がソファベッドに寝転んだとき、帰り支度をしていたいとこがつぶやいた。

 「あれっ? 叔父さん、息してないかも」

 ナースコールを押すと、数分後…

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