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Round19 AI、どこまで進化するの 庄司vs.論説委員後編

 「あなたはAI(人工知能)搭載のアンドロイドですよね? 庄司さん、警官にこんな職務質問をされたら、どう反論しますか」

 AIをテーマとした対談で、お笑い芸人の庄司智春に朝日新聞論説委員・大牟田透は質問を投げかけた。

 えっ。面食らう庄司。AIじゃないです、としか答えようがないんじゃ…

 AIと会話して、機械なのか人間なのか区別がつかなくなる。「チューリングテスト」というAIの評価方法で、そのレベルに達したAIが2014年に初めて登場している。

チューリングテスト人工知能の評価方法として1950年、イギリスの数学者アラン・チューリングが提唱した。ソフトと「会話」した審査員の3割以上が、相手が機械と見破ることができなければ「合格」となる。
■13歳少年、実はロシアの人工知能 3割の人だまされる

 藤子・F・不二雄のマンガ「パーマン」に出てくる「コピーロボット」みたいだな。フィクションだった世界が現実に…見てみたいけど、ちょっと怖い。庄司がつぶやくと、大牟田はポジティブな面に目を向けさせようとした。「AIで生活が良くなると思う分野ってありますか」と尋ねる。

 すぐに思い浮かんだのは、介護だ。人手不足で大変だし。でも温かみに欠けるのかなあ。

 「まさにそれです」と大牟田はうなずく。大牟田の母も認知症で施設で暮らしており、心地よいと感じられる介護が受けられることを家族として願っている。だが、よい介護をするには経験を積む必要があり、そのノウハウを伝えるのがなかなか難しい。介護を受ける人がどう感じるか個人差もかなりある。

2017年の国際福祉機器展

 AIは、そうした難しさを克服できる可能性を秘める。介護を受ける人の表情の画像を大量に撮りためて、いい表情になる接し方を分析する。個人ごとに最適な介護の仕方が分かれば、人間の介護者に伝えることができるし、介護者が人間からロボットに置き換わっても有用だ。

 生活に身近な分野だけでなく、政治の世界でもAIは役立ちそうだ、と大牟田は続ける。

 現実の政治は、身近な関心事やしがらみにとらわれることも多い。でもAIならば、普段あまり考えないような問題、例えばアフリカの飢餓問題や野生動物の危機なんかを考慮に入れながらも、結果的に私たちにとっても有益になる政策判断を導き出せるのではないか。たくさんの情報を的確に収集して判断するという広い視野は、AIのほうが優れている可能性がある。

 「日本のような民主国家だと、AIの決定を政策としていきなりやろうとしても難しいでしょう。多様な価値観の重み付けはAIの不得意な分野ですしね。でも独裁国家でAIの政策を実行に移したらうまくいって、社会制度が進化するかもしれません。それに対抗するためにも、ほかの国だってAIを捨て去ることはできないでしょう」と大牟田は話す。

 庄司に不安がよぎる。そこまで優秀なAIが生まれたら、人間が支配されてしまう恐れはないの?

 人間の制御を超えて世界を根底から変えてしまう「シンギュラリティー」と呼ばれる問題です、と大牟田。昨年、世界のAI研究者たちがアシロマ原則という開発指針をまとめた。人間の尊厳を脅かさないよう歯止めをかけるためだ。「ですが庄司さんも、お子さんになるべく賢い人間になって欲しいですよね。研究者も一緒です。AIを人間に近づけ、さらには親である自分たちよりも優れたものにしたい。人間を超える新しい種ができることが絶対ないとは言い切れません」

アシロマ原則米アシロマで法律、哲学などの専門家と一緒にまとめたAI開発で守るべき23の原則。「人間の尊厳、権利、文化的多様性に適合するように設計・運用」と理念を掲げ、軍拡競争の回避なども盛り込んだ。ちなみにSF作家アシモフが約70年前に考えた「ロボット三原則」は①人間に危害を加えない②命令に服従③自己を守る。

 AIの進化はすでに人間の模倣にとどまらず、自己進化の領域に入っている。囲碁ソフト「アルファ碁」は人間が過去に打った棋譜を研究して強くなったが、後継の「アルファ碁ゼロ」はルールしか教えられていない。最初は3歳児程度の能力だったが、人間の棋譜を取り込むことなく、AI内部の対戦を繰り返すだけでアルファ碁より強くなった。

 庄司は、子どもに読書の習慣をつけようと読み聞かせをしている。勉強も好きになって、自分より賢くなって欲しい半面、大きくなって「お父さん、こんなのもわかんないの」とか言われたらどうしよう。最終的にいろいろ指図されて、全部乗っ取られるんじゃないか。AIと人間の関係も、そんな感じかも。

 「そうですね。AIは賢くなっていいんだけど、生みの親も大切にして欲しいですよね」と大牟田は笑って続ける。「さっき人間とAIの違いを聞きましたが、人間は愚か、愚かでないのはAI、というレベルまで行くのかも知れません」

 ここまで技術が進んだら、どんな未来が待ち受けていようとも、行き着くところまで行く。それが人間なんだろう。

 「止まらないですよ。一度獲得した技術は捨てられません」と大牟田も同意する。

 怖いけど、見てみたい。ゾクゾクしてきた。それは、思ったよりも近い未来なんだろう。いったいどんな世界が待っているんだ。

「庄説」に続くAIと人間は共存できるのか、それとも…庄司智春さんが執筆する社説ならぬ「庄説」。対談を踏まえてより良い未来のために必要なことを考えます。
■(庄説)AIの進化、人間の進化も必要だ 庄司智春さん