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 5年生存率が低く、島根県内に患者が多い膵臓(すいぞう)のがんを治す方法を見つけようと、島根大医学部と県立出雲高校の生徒たちが共同で研究を進めている。これまでにがん細胞を死滅させる働きがある物質を作り出す微生物の存在を突き止めた。高校生たちは医学部の研究室に通い、未来の新薬につながる可能性を求めて研究を続けている。

 出雲高は理科や数学の先進的な教育をする学校として文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール」に指定され、学習指導要領によらない課題研究などに力を入れている。島根大はこの事業に協力。理数科の2年生を5人1組ずつの4組計20人指導している。このうちの1組が医学部生化学講座の浦野健教授(59)の下で、2013年度から5年間の「膵がん撲滅プロジェクト」に加わっている。

 浦野教授によると、がんと診断されて5年後に生存している人の割合を示す5年生存率は、胃がんや大腸がんなどが60%台なのに対し膵がんは約5%で、がんの中で最も低い。10万人当たりの膵がんになる人の割合は、島根県がおおむね全都道府県の5~10位に位置しているという。4日に死去した元プロ野球監督の星野仙一氏も闘病していた。

 研究の上でヒントになったのが、土の中の微生物から病気の薬になる物質を見つけ出してノーベル賞を受賞した化学者の大村智博士だ。「出雲は湿度が高いので新しい微生物を発見できるかもしれない」との発想から、生徒の自宅の納屋や高校の教室、医学部の実験室などに培養のための培地を置き、そこで増殖した微生物を採取した。

 その結果、ある微生物が作り出す物質を膵がん細胞にかけると細胞が死滅することが分かった。正常細胞は死滅させるようなことがなかったという。

 この研究成果は昨年度の2年生(現3年生)によるもので、今年度の2年生はさらに、高校の敷地内にある植物園「久徴園(きゅうちょうえん)」に注目し、植物の毒で膵がんを殺すことができないかどうか調べている。その一人の熊谷健隆(たける)さんは、「まだ答えが分かっていないことを調べているので、これからどうなるのかドキドキする」。

 5人は今月中にシンガポールを訪れ、今年度の研究成果を現地の研究者たちに英語で発表する予定だ。浦野教授は、「高校生との共同研究がなければ今回のような微生物の発見もなかった。これからの展開が楽しみだ」と話している。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(木脇みのり)