写真・図版

[PR]

 高齢化社会に合わせた相続制度の見直しを議論してきた法相の諮問機関「法制審議会」相続部会は16日、故人の配偶者が住まいや生活費を確保しやすくなることを柱とした民法の改正要綱案をまとめた。相続の権利がない親族が介護などに尽力した場合、相続人に金銭を請求できる制度の新設なども盛り込まれた。一方、事実婚など法律婚でない場合は、相続の対象外という点は変わっていない。

 法務省は、法制審から法相への答申を受け、22日開会の通常国会に民法改正案を提出する。相続法制の大幅な見直しは1980年以来、約40年ぶりだ。

 これまでは預貯金などの財産が少ない場合、自宅を売却して遺産を分割せざるをえず、配偶者が退去を迫られるケースがあった。要綱案では、「配偶者居住権」を新設。住宅の権利を「所有権」と「居住権」に分割し、配偶者は居住権を取得すれば、所有権が別の相続人や第三者に渡っても自宅に住み続けることができる。居住権は施設に入所するなどしても、譲渡や売買はできない。

 居住権の金額は、配偶者の年齢の平均余命などから算出され高齢なほど安くなる。その分、これまでより多くの預貯金を相続できる。年齢と関係なく、期間を限定して設定することもできる。

 また、結婚して20年以上の夫婦で、配偶者が自宅の生前贈与を受けた場合、自宅は相続人が分け合う遺産の総額から除外される。これも配偶者が引き続き暮らせる住居を確保するとともに、預貯金などの遺産を得やすくする措置だ。

息子の妻の「貢献」考慮

 相続人以外の親族が、介護などをした場合、相続する権利がなくても、遺産の相続人に金銭を請求できる制度も新設する。支払額は当事者間の協議で決めるが、合意できない場合には家庭裁判所に決めてもらうこともできる。この場合の親族は、6親等(いとこの孫ら)以内の血族と、3親等(おいやめい)以内の配偶者が相当する。義父を介護してきた「息子の妻」などを想定している。事実婚や内縁など、戸籍上の親族でない人は請求できない。

 現行制度にも、故人の財産の増加や維持に特別に貢献した人の遺産の取り分を増やす「寄与制度」はあったが、対象は相続人に限られてきた。「息子」が亡くなっている場合、「息子の妻」が介護などで「貢献」をしても相続で考慮されない不備が指摘されていた。

 さらに、相続人同士の話し合いで受け取る遺産の内容を決める「遺産分割」が終わる前でも、生活費や葬儀費用の支払いなどのために故人の預貯金を金融機関から引き出しやすくする「仮払制度」の創設も盛り込んだ。2016年12月の最高裁決定で、それまで法律が定めた一定の相続割合で自動的に分けられるとされてきた預貯金も遺産分割の対象に含まれるようになり、現行制度では「(遺産分割の協議が終わるまで)預金が引き出しにくくなる」との不便が生じていた。(小松隆次郎

相続制度見直し案の主なポイント

【配偶者】

・所有権を取得しなくても自宅に住み続けられる「配偶者居住権」を新設

・生前贈与の自宅は遺産分割の対象外に

【相続権のない親族】

・6親等以内の親族(いとこの孫らまで)が介護などに尽力した場合、相続人に金銭請求可能に

【故人の預貯金活用】

・遺産分割前に生活費などの引き出し可能に

【遺言書作成の柔軟化】

・財産目録はパソコンの印字でも可能に