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 他人のiPS細胞を使って網膜の病気を治療する臨床研究で、手術を受けた70代男性の網膜の上に膜ができ、取り除く再手術をしたと理化学研究所などのチームが16日、発表した。iPS細胞を変化させた細胞を移植する際に漏れて膜ができた可能性があるという。一方、iPS細胞から作った細胞による拒絶反応の可能性は低いと説明した。

 記者会見した理研などの説明によると、チームは昨年、京大iPS細胞研究所が備蓄する「iPS細胞ストック」の細胞を網膜の細胞に変化させ、目の病気「加齢黄斑変性」の患者5人に移植した。うち6月に手術した男性の網膜に、手術後、腫れと網膜表面の膜が確認された。失明のリスクは比較的低いものの今月15日に再手術、膜を取り除いた。

 膜が出来た原因について、iPS細胞からつくって注射で移植した細胞が漏れ出たり逆流したりして膜ができた可能性を挙げた。ほかに最初の手術の際の合併症や、加齢黄斑変性が悪化した可能性も考えられるとした。一般的に加齢や手術の合併症として網膜の上に膜が出来ることがあるという。

 iPS細胞ストックは、多くの日本人に拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人の細胞から作ったiPS細胞を備蓄。男性はこの免疫の型に合う人で、拒絶反応は血液検査で確認されていないという。手術を執刀した神戸市立医療センター中央市民病院の栗本康夫眼科部長は「拒絶はゼロではないが、メインの原因ではないだろう」と語った。また、理研の高橋政代・プロジェクトリーダーは「他のiPS細胞を使った臨床研究に影響するものではない。今後、手術の方法を工夫していく余地がある」と話した。臨床研究は拒絶反応がないかや、移植細胞ががん化しないかなどを調べるのが目的で、中止しないという。

 チームは厚生労働省に報告しており、厚労省の担当者は「法に基づいて報告を受けている。再生医療等評価部会の委員とも共有しており、部会での意見を踏まえて対応を検討したい」と話している。

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(合田禄、西川迅)