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 光をあててがん細胞を壊す新たながん免疫療法の実用化を目指す米ベンチャー企業の会長を務める楽天の三木谷浩史会長兼社長(52)。膵臓(すいぞう)がんになった父の治療法を探すうち開発者と出会い、関わることになりました。がん治療への思いを伺いました。

父にがん。わらにもすがる思いで

 2012年に父に膵臓(すいぞう)がんが見つかり、「治療が難しく、残された時間は長くない」という診断を受けました。起業家には「不可能なものを可能にできる」と思えてしまうところがあります。世界中の大学や病院を回り、様々な化学療法、放射線治療などの可能性を探っていた時、友人から電話をもらいました。友人のいとこの小林久隆さんという方が米国立保健研究所(NIH)で、「光でがんを治す研究をしている」という話でした。「光でがん? うさんくさい話だな。そんなんじゃ治らないだろう」。最初はそう思いました。

みきたに・ひろし
1965年生まれ、神戸市出身。日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て97年、株式会社エム・ディー・エム(現・楽天株式会社)を設立し、インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。がん光免疫療法を手がける米ベンチャー企業「アスピリアン・セラピューティクス」の会長も務める。

 わらにもすがる思いだったので、すぐに小林さんと会いました。13年4月のことです。その時は、まだまだ早期の技術という話でしたが、私は直感的にも論理的に考えてもうまくいくと思いました。物理的にがん細胞を爆発させているところが従来の化学療法や放射線治療、手術とは全く違う。新しい手法の確立で、かなり有効な局所治療の一つになると思いました。

数億円の支援。不可能を可能へ

 小林さんから治験のための資金が集まらないと聞き、最初に会ってから約1週間後には、個人として数億円の支援を決めました。「やってみようじゃないか」というベンチャー精神です。万が一、うまくいかなくなったとしても、父に間に合わないとしても、賭けてみる価値は十分あると思ったんです。「右脳で考え、左脳で分析する」と私はいつも言っています。光免疫療法は、生物学、化学、光物理学の接合点であること、直接的にがんを殺しているのは免疫で免疫復活効果も望める。「非常に可能性は高い」と考えました。

 楽天はこれまでもビジネスモデルの壁をぶちやぶってきました。ネットショッピングから旅行、金融に進出。世界に進出し社内の公用語を英語にしました。タブーに挑戦し続けてきたんです。動物実験でうまく行っても人に応用できるとは限らない医学研究の世界で、素人の私が光免疫療法への支援を決めたのもタブーへの挑戦と言えるかもしれません。ただ、私は素人でも私の周りには、物理、化学、生物学の専門家がいます。私はそのオーケストラの指揮者ではなく、全体の方向性を示す音楽監督のような存在だと思っています。

 支援を決めてから約半年後の13年11月、父は83歳で亡くなりましたが、支援は続けました。世の中にはがんで苦しんでいる患者、家族の方がたくさんいるはずなので、その方々を助けられればと思いました。金融学が専門だった父も常々、企業の使命は「人類社会の発展に対する貢献である」と言っていましたから。私たちは流通、金融、情報産業というかたちで社会に貢献していますが、光免疫療法は人々の生活を維持したり、非常に厳しい状況を克服したりするお手伝いができるという点でとても意味があると思いました。

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