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 AV出演強要が社会問題化するなか、警視庁は2016年6月、所属女性をAV撮影に派遣したとして芸能事務所社長ら3人を労働者派遣法違反(有害業務就労目的派遣)の疑いで逮捕した。同年10月にも、同容疑で別の芸能事務所社長ら12人を書類送検している。

 AV出演をめぐってはこれまで、わいせつな行為が有害業務にあたるとして労働者派遣法や職業安定法を適用する例が多く、有罪判決も出ている。

 だが、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN、東京)事務局長の伊藤和子弁護士によると、被害者側に契約書が渡されるケースはほぼないため、契約関係や内容について被害者から詳しく聞き出して「労働者」とみなして立証するハードルが高い場合もあるという。

 また、一連の有罪判決を受けて、出演者と契約を交わす際、「雇用契約」ではなく、「業務委託」などの形をとって、労働者派遣法などによる摘発を避けようとする業界側の動きもあるという。伊藤弁護士は「淫行勧誘罪を適用した意義は大きい。AVに出たことのない女性を不当な方法で勧誘して撮影で性交渉をさせたら、シンプルに摘発する道が開けた」と話す。

 AVの出演強要をめぐっては16年3月、HRNが被害実態を詳細に聞き取った調査報告書を公表。これをきっかけに、政府が17年3月、内閣府や警察庁などでつくる対策会議を設置するなど、社会問題としての認識が広まった。

 被害相談は年々増加している。被害者支援のNPO法人「ライトハウス」(東京)などが設ける窓口への相談件数は14年の36件から、15年は62件、16年は100件に上り、17年も99件寄せられた。担当者によると、被害者は10~20代の若年層で、進学や就職のため東京に転居したり、東京に遊びに来たりした地方出身者が大半。約5%は男性からの相談だという。

 悪質な業者は、声をかける際にはAVであるとは口にせず、契約時にも「AV以外の仕事もある」など、リスクについては一切説明しないまま契約書にサインさせたり、撮影をしたりする。断ろうとすると「違約金」を要求したり、「写真をばらまく」などと脅したりして出演を強要する事例が多いという。担当者は「相手は業界の『プロ』。自分だけだと丸め込まれてしまう危険があるので、少しでも早い段階で相談してほしい」と話す。(荒ちひろ)

悪質なAV出演強要の例(NPO法人「ライトハウス」などへの取材から)

・「モデルにならない?」「タレントにならない?」などと勧誘し、ついてくるまで「AV」とは言わない

・「AV以外の仕事もある」「仕事は自分で選べる」など、リスクについて一切説明しないまま、契約書にサインを迫る

・「家族に見られたら困るだろうから、預かっておいてあげる」などと言って、契約書のコピーを渡さない

・「写真だけでも撮らせてほしい」などと言いくるめて撮影する

・「芸能界への登竜門」などと説明。実際に有名女優に会わせて信用させることも

・仕事内容や撮影日が勝手に決められ、断っても「この業界ではこれが普通」「大人社会では通用しない」などと言って取り合わない

・断ろうとすると契約書を盾に「違約金」を要求したり、写真をばらまくなどと脅したりする

相談窓口

ライトハウス(0120・879・871)

ポルノ被害と性暴力を考える会(050・3177・5432)