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 大相撲初場所は稀勢の里が3日連続で金星を配給し、6日目から休場に追い込まれた。稀勢の里は九州場所の7~9日目にも金星を配給している。2場所続けて3日連続の金星配給は、戦後初めての不名誉だ。

 金星は平幕力士が横綱に勝つことであり、小結以上の役力士が横綱に勝っても金星にはならない。また、横綱が「まげつかみ」などの反則で負けた場合も、相手力士の金星とはならない。横綱の反則負けは2014年秋場所4日目に横綱日馬富士が平幕の嘉風のまげをつかんだ例がある。

 では、横綱に勝って金星をあげた力士には、何か特典があるのだろうか。

 実は、金星一つで年収が24万円アップする。

 「給金相撲」という言葉を聞いたことがあるだろうか。勝ち越しをかけた取組を指すのだが、力士が勝ち越すと「給金」が増額される。8勝7敗なら「勝ち越し1点」で0・5円、10勝5敗なら「勝ち越し5点」で2・5円が加算される。こうして積み上げていった総額を力士個人の「持ち給金」という。それを4千倍した金額が年6度の本場所ごとに、月給とは別に引退するまで支給される。

 金星の給金は10円という別格の評価を受ける。金星1個で場所ごとに4万円、引退するまで年間24万円がもらえる。稀勢の里を破って現役最多となる8個の金星を獲得した嘉風は、金星だけで年192万円が加算され続ける計算だ。

 ところで、大相撲報道には100年以上の歴史があり、先人たちが練り上げた様々な用語や言い回しがある。例えば、土俵際で相手を投げたと思ったら、投げた力士のまげが土俵の外周に盛ってある砂に先に触れていた――という場合。「まげのはけ先が蛇の目を掃いていた」なんて表現をする。相撲担当記者は、まずこれら膨大な言葉遣いを覚えるのに苦労する。

 金星にも細かなルールがある。金星は横綱が下位の力士に与えるものなので、「金星を配給」と表記するのが朝日新聞の決まりだ、と教わった。ところが、ありがちなミスが「金星を献上」と書いてしまう。僕も20年近く前に、先輩からずいぶん叱られたものです。(抜井規泰)