21日午前6時40分ごろ、東京都大田区田園調布5丁目の多摩川で、評論家の西部(にしべ)邁(すすむ)さん(78)の長男から、「父親が川に入った」と110番通報があった。警視庁と消防が男性を救出したが、約2時間後に搬送先の病院で死亡が確認された。

 田園調布署によると、男性は西部さんだった。同日未明に家族が「父親がいない」と110番通報していた。行方を捜しているなかで、多摩川で長男が見つけ、通報したという。河川敷に遺書が残されていたといい、署は自殺の可能性があるとみている。

 西部さんは1939年、北海道生まれ。東大経済学部卒、同大大学院修士課程修了。元東大教授。60年安保闘争の際には全学連の指導層におり、後に保守派の論客として活躍した。経済学研究でスタートし、大衆化や米国流の経済思想を鋭く批判。「ソシオ・エコノミックス」「大衆への反逆」「六〇年安保」などの著書で注目された。88年には教員人事の進め方を不満として東大教授を辞職。94年、保守派を自任する月刊オピニオン誌「発言者」を創刊し、主幹を務めた。80年代後半以降は討論番組「朝まで生テレビ!」のメンバーとしても活躍。柔らかな表情から鋭い批判の言葉を繰り出し、人気を呼んだ。

 歴史に根ざした伝統を重んじ、人間の理性を過信しないことが保守思想の特徴であると訴え、幅広い人々に影響を与えた。戦後日本の保守は本当に保守の名に値するかという問いを発し続け、対米追従的な「親米保守」を鋭く批判した。

 今世紀初頭、9・11同時多発テロを経験した米国がイラク戦争になだれ込んでいく際には、保守派の立場から反対の論陣を張った。日本の保守政権が米国追認に傾く中、「侵略であると断じざるを得ない」(本紙2004年)と語った。