<ジャーナリスト田原総一朗さんの話>

 「朝まで生テレビ!」に出演をお願いした時、「悪役になることを承知で出演してくれないか」と頼んだ。かつては学者や評論家というと、左翼なのが当たり前。それでも出演してくれ、ラジカルなことを率直に語ってくれた。民主主義は、ポピュリズムを生み、ファシズムにつながるから危険である、といったこともすでに語っていた。

 僕は彼とは意見は違ったけれども人間として信頼していた。決して何が起きても時流におもねらない。そういう人物でした。

 昨年秋にラジオ放送で会った時も、今の日本のあり方を痛烈に批判していた。彼のような強烈な個性が(今の日本社会から)失われてしまったことを残念に思う。

     ◇

<西部さんと親交が深かった中島岳志・東京工業大学教授(近代思想史)の話>

 文芸評論家がおもに担ってきた戦後保守の中で、著作「ソシオ・エコノミックス」(1975年)などで社会科学的な思考を導入して保守思想を展開した突出した思想家だった。人間の合理性を疑いながらも、徹底して合理的に考え続け、保守とリベラルとは相互補完的な関係にあると早くから考えていた。

 「思想家は時評から退いてはならない」という言葉を何度も聞かされた。テレビなどメディアへの露出もその信念に基づくものだったと思う。明治時代の中江兆民や福沢諭吉らのように、思想とは、今起きていることにどう切り込むかによって生まれるという強い信念を最後まで持っていた。死をとても残念に思う。