[PR]

 記憶を奪われる時、人は消滅の危機にどう立ち向かえばいいのか――。作家小川洋子の同名小説を原作として舞台化した「密(ひそ)やかな結晶」(鄭義信〈チョンウィシン〉脚本・演出)が2月2日から、東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演される。主演の石原さとみは約4年ぶりの舞台。「やりたくて仕方なかった。未知のテイストに挑みます」と話す。

 「知らない自分に会える。恥もかけるし、失敗や駄目出しも経験できる。舞台は面白い」

 「記憶狩り」が横行し、物事が消滅する島に、小説家「わたし」(石原)と容姿が若いままの「おじいさん」(村上虹郎)が住んでいた。記憶が消滅しない編集者R氏(鈴木浩介)が訪れ、「わたし」はR氏を守ろうとする。不条理な世界だが、人とは何かの問いを突きつけてくる。

 「小説の世界に入り込めた。人間くさいのにファンタジー。読み手の哲学、考え方でひっかかりどころも変化するのでは」と言う。

 「失うことがいけないわけではなく、人は新しいものに順応するものだけれど、例えばマンションが建ってスナックや居酒屋が消えると、その街の思い出や記憶も、悲しさ、切なさといった大事な感情もなくしてしまうのでは。人を作る過去を失うことで、心はスカスカになっていく」

 石原は鄭の舞台を好み、「一緒に仕事がしたい」と熱望していたという。「指示が的確で自分が違うとらえ方をしていたと気づかされる。0・1解決すると、10解決する感覚」

 舞台に熱くなる理由の一つが2008年に自ら主演したつかこうへい作・演出の「幕末純情伝」だった。「かけていただいた愛情が大きかった。鍛えられ、刻まれたツカイズムの記憶が折々、よみがえります」

 映画、テレビでも躍進が続く。「知識欲が旺盛なんです。深く掘りたい。頑張って何かを得たら、何かを失うのではなく、いろんなものがついてくるという人生観です」と前向きな一方、「持続力が足りないかなあ。それが克服できたら強みになると思います」。

 2月25日まで。ベンガル、山内圭哉らも出演。9千円、7千円。03・3490・4949(ホリプロチケットセンター)。(米原範彦)