[PR]

 川崎市の有料老人ホームで2014年、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、3件の殺人罪で起訴された元職員の今井隼人被告(25)の裁判員裁判が23日、横浜地裁(渡辺英敬裁判長)で始まった。今井被告は「何もやっていません」と起訴内容を否認。弁護側は「事件性、犯人性を争う。予備的主張として責任能力も争う」と無罪を主張した。

 検察側の主張によると、今井被告は有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」=川崎市幸区=に勤務していた14年11月3日午後11時ごろから翌4日午前1時50分ごろまでの間、入所者の男性(当時87)を4階ベランダから投げ落として殺害。12月9日午前1時半ごろから同4時10分ごろに4階ベランダから当時86歳の女性を、さらに同31日午前1時10分ごろから同2時ごろまでに6階ベランダから当時96歳の女性を投げ落として殺害したとされる。

 検察側は冒頭陳述で▽入所者の3人はいずれもベランダを自力で乗り越えることは不可能だった▽転落死があったすべての日に当直として勤務していた職員は今井被告だけだった▽1件目の転落死以降、「次はあの女性が転落するのではないか」と2人の女性を名指しし、同僚に予告していた――などと主張した。今井被告が16年2月の逮捕前後に犯行を自白した様子を撮影した録音・録画を証拠提出するなどして立証するという。

 一方の弁護側は、事故や自殺、第三者の犯行の可能性を否定できないと指摘。検察側は今井被告の犯行を立証できていないと主張した。自白の内容の信用性を争うという。さらに、今井被告は自閉症スペクトラム障害と知的障害だったと主張した。

 捜査関係者によると、今井被告は逮捕前後に3人の殺害を認めたうえ、「手がかかり、以前から煩わしいと思っていた」などと介護への不満やストレスを動機として話したとされるが、起訴後の公判前整理手続きで否認に転じたという。(古田寛也)