京都大名誉教授・佐伯啓思

 西部邁(すすむ)さんが逝去された。予想していたとはいえ、現実となればたいへんに寂しい。その死について他人がとやかくいう筋合いではない。余人にはできぬその激しい生き方の延長上にある強い覚悟をもった死であった。

 私が西部さんと出会ったのは、もう40年以上前になる。若手の経済学者として東大に赴任された西部さんとは、毎週、ほとんど夜が明けるまで論じ、笑い、厳しく問い詰められた。私の大学院生活の後半のすべてがそこにあった。この濃密な時間のなかで、西部さんが絶えず問いかけたのは、生への覚悟であった。お前は何を信条にして生きているのか、それを実践しているのか、という問いかけであった。自らの信条も覚悟ももたぬ者が学問や研究などやって何になるのだ、というのである。

 その西部さんが、社会に蔓延(まんえん)する偽善や欺瞞(ぎまん)の言説に我慢がならなかったのは当然であろう。どれほどの高名な学者であれ、社会的な著名人であれ、その言動の根底に偽善やごまかしを見いだせば、西部さんは容赦なかった。その意味で、彼ほど、権力や権威や評判におもねることを嫌った人を私は知らない。

 西部さんは、過敏といってよい…

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