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 身の回りでセクハラ行為や発言に接したことのない人は、あまりいないのではないでしょうか。セクハラなどを容認する言動に対して、私たちはどう振る舞うのか、容認する言動を問題にしにくい空気はなぜ生じるのかをアンケートで尋ねました。集まった声とともに、取材班の記者が議論を通じて何を考えたのかを紹介します。

周りの人 止めに入って

 セクハラを容認しないためには、どうすればいいのか。アンケートに集まった意見の一部です。

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●「一体何が『セクハラ』にあたるのか再確認すべき」(兵庫県・20代男性)

●「日本の男尊女卑的な背景もあって、セクハラする人はその行為が嫌な思いをさせていることにも気付いていなさそうです。少しずつでも『傷つきます。嫌です』ということを表現していきたいです。すぐには変わらなくても」(神奈川県・40代女性)

●「まずは知ることだと思います。22日付の『男性は』を読み、被害の実態や『タフな男性像』を求められて嫌だという気持ちが初めて理解できた気がします。無知ゆえに傷つけてしまうことがないように自分も気をつけたい。男性ももっと声を上げてもらえたらと思います。もう一つは周りが助けることです。私自身様々な被害に遭いましたが、社会人になってから女性の先輩が守ってくれたことがあり、初めて『味方がいるんだ。自分は悪くないんだ』と思えて涙が出ました。私の身近な女性でセクハラに遭ったことがない人は誰もいません。こんな社会、本当におかしいですよね。加害者に自覚させるためにも、周りが止めに入ると、被害者は心強いと思います」(茨城県・30代女性)

●「周りでセクハラ発言する人がいても、『それヤバイですよねーこれからの時代生きていくつもりなら』と言う。同調する人を増やす」(東京都・30代女性)

●「自分自身が十分に尊重を受けている人はセクハラに及ぶこともないのでは?と思うので、学校や会社など社会の中で人が多くの時間を過ごす場所に、人として心から尊重される文化を醸成していくこと」(鹿児島県・30代男性)

●「言われている本人が気にしていない場合、本人が気にしていないからいいじゃん、で片付けられてしまう。プライベートな会話ならいいが、職場など公的な場での会話である以上、セクハラ発言は言う人言われる人だけの問題ではなく、周りの人も不愉快な思いをする。セクハラを許さないのは個人の問題ではなく、職場や社会の問題と認識する必要があると思う」(東京都・30代女性)

●「現場を見たら、できるだけすぐに声を出したい」(新潟県・10代その他)

●「マスメディアの中の人たちの意識変革。テレビ、特にバラエティーを見ていると、身の回りであったら絶対セクハラだなと思うことも普通に流している。許されることだと勘違いして同じことをする人は必ずいる。メディアの影響はやはりまだ大きいので、あからさまにセクハラと思える行為を放送していいと思うその感覚を変える必要があると思う」(千葉県・30代女性)

●「中高生など若いうちに、どういうことが性的暴力にあたるのか、性的暴力の被害者がどれだけ苦しむのかをきちんと教育すること。今の日本ではこれが全くされていない」(東京都・40代女性)

●「男女が平等であることを、幼い頃から教えて、価値観を変えていくしかないと思う。正直、今の大人たちには、これは難しいと思うし、あまり期待できない。私たちの若い世代から、このセクハラがまかり通る空気を変えていきたい。誰も傷ついたりしない社会にしたい」(佐賀県・10代女性)

声上げた人 孤立させない 瀬地山角・東京大大学院教授

 #MeTooに、第三者はどうかかわっていくのがよいのか。ジェンダー研究者の瀬地山角(せちやまかく)・東京大大学院教授に聞きました。

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 #MeTooが掘り起こしたのは、会社や大学などの一つの組織ではなく、下請けやフリーと取引先、メディアと取材先、教育実習の現場など「所属組織は違うが、力関係の差が生じやすい」という空間で多くの被害が起きている実態でした。男女雇用機会均等法で一応は通報窓口がある会社などと違い、こうした被害は刑事事件化しない限り訴える先がなかった。その被害の多さが可視化された意味は大きいと思います。

 一方、声を上げた人に対する不当なバッシングもありました。「スカートが短ければ性被害に遭っても仕方がない」という類いのもので、理屈としては論外です。きちんと批判し、声を上げた人を孤立させないようにしないといけない。それこそが、第三者にできることです。

 セクハラなどを目撃した場合も似ています。直接注意できるのが望ましくはありますが、加害者が上司の場合など、難しいこともあるでしょう。それでも、被害者に「あれはひどかったね」「被害を訴えるなら証言する」と寄り添うことはできるはずです。

 今後、取り組むべきだと思うのは痴漢の問題です。教え子の女子学生から「私が声をあげて、電車が遅れたらと思うと『もういいや』と思ってしまった」という話を聞きました。でも、多くの女性が日々直面している性被害なのに、見過ごされてきました。#MeTooでは、ツイッターが告発にも、共感のツールとしても大きな役割を果たしました。使えるツールは使い、声を上げやすい環境を整えることも大切です。例えば、鉄道会社は痴漢被害を報告できるサイトを立ち上げ、膨大な被害の把握と対策につなげてはどうでしょう。安全な鉄道のアピールにもなるはずです。鉄道会社がやらなくても、こうしたサイトができて被害が可視化されれば、鉄道も警察も対策に取り組まざるをえなくなるでしょう。

 一つ一つ、おかしいことはおかしいと声を上げる。そして声を上げた人を孤立させず、上げて良かったと思う体験を積み重ねていくことは、性被害の問題だけでなく、誰もが生きやすい社会につながっていくはずです。(聞き手・千葉雄高)

介入のノウハウ 学ぶ場も

 「飲み会などの場できわどい発言に接した時、どう行動すればいいのか悩む」。取材班の男性記者からそんな声が上がりました。

 セクハラなどの「現場」に居合わせた人や、身近に当事者がいるという人は、どう振る舞えばいいのか。ノウハウを学び、広めようという動きが生まれています。

 ジェンダーや性暴力などについて考える団体「ちゃぶ台返し女子アクション」は、大学生らを対象に、同意のない性的接触は性暴力にあたることを認識し、同意の大切さを学ぶワークショップ(WS)を開催しています。これまでに、のべ900人以上が参加しました。昨年9月のWSはいつもとは少し違った視点から。「第三者介入」という、被害を見聞きした人の適切な関わり方について学ぶ内容でした。

 「飲み会で酔い潰れた女子を1人で連れて帰ろうとしている男子がいた。僕と別の女子で『まずいよね』と話し、同行した。同じ考えの人がいたから動くことができた」「後輩が性暴力被害に遭いかけた。相手について『なんかやばそう』と聞いていたのに何もできず、後悔した」――。

 学生たちは、「介入」に関する経験を共有。被害や、被害に発展しそうな状況を見聞きした時に、どんなタイミングでどう関わればいいのかを、ロールプレー(演技)をしながら話し合いました。

 共同代表の大沢祥子(さちこ)さん(26)によると、米国の大学では、性暴力の予防プログラムを新入生や職員に実施することが法律で義務づけられていて、その中には第三者介入についての内容も含まれているそうです。

 WSで大沢さんは、電車内で激しいケンカを始めた2人の間に入り、ポテトチップスをパリパリと食べ続けた男性の動画を見せ、「直接注意したり誰かに助けを求めたりするほか、この男性のようにさりげない介入の仕方もある」と学生に伝えました。「これは性暴力なのか、介入すべきなのかと迷う時もあるでしょう。でも、少しでも『あれ?』と思ったら、最悪のシナリオを想定して行動してほしい。私たち一人一人の言動が社会規範を作っていく。被害者でも加害者でもないからと傍観するのではなく、第三者としてできることをしてほしい」と話します。

 「傍観者でいるのはやめよう」と行政が呼びかけ、反響を呼んだ事例もあります。

 カナダ・オンタリオ州政府は2015年、セクハラや性暴力を「見ているあなた」に向けた動画を作りました。職場や学校やバーで被害に遭う女性たちが映し出され、それを見ていながら何もせずにいるという設定の視聴者に、加害者が「(何もしないでいてくれて)ありがとう」とささやく内容です。昨年、世界各地で#MeTooの声が上がったことで、あらためて注目されました。

 同州トロント市に住む映像制作会社経営の吉田貴臣さん(26)は、この動画に日本語字幕をつけ、SNSで公開しました。日本の人にも見てもらいたいと思った理由について「(ジャーナリストの)伊藤詩織さんや(ブロガーで作家の)はあちゅうさんの告発があり、日本のツイッターでも#MeTooをよく見るようになった時期に動画を見た。傍観者でいることはセクハラを助長しているということ、というメッセージにハッとした。また、公的機関によるこうしたキャンペーンは、被害者にとっても、この問題を解決したいと思う人たちにとっても心強いことだと感じたから」といいます。

 吉田さん自身は、飲み会などで気になる言動に接した時は「加害者側に『それくらいにしておいたほうが良いですよ』と伝えたり、被害者側に『無理に付き合わなくても大丈夫』『言いたくないことは言わなくていい』と言ったりしている」そうです。「電車で具合の悪そうな人がいたら席を譲ったり、重い荷物を持っている人がいたら扉を開けたりするのと同じ感じで、セクハラを見かけたら注意したり被害者が逃げられる状況を作ったりする。そんなふうに、社会全体の意識が変わっていったらいいなと思っています」(三島あずさ)

男性としてどうすれば

 学生の頃、バイト先で男性の先輩がこう言いました。「飲み会で女の子に触っても、相手は俺なら嫌じゃないらしいんだよね」。その場にいた女性の後輩は笑顔でした。面倒を避けたかったのかもしれません。僕は不快に感じながら対応に困って、いい加減な相づちを打ちながら聞いているだけでした。#MeToo取材班の一員として様々な声を聞き、自分の言動を思い返しては考え込む毎日です。この動きが日本で広がりを欠いているとすれば、あの時の僕のような第三者が沈黙していることも一因かもしれません。後ろめたさから解放されるためにも、男性の主体的な関わり方を模索していきたいと思います。(滝沢文那

#MeTooの「その先」考え続ける

 「私がされたことも被害と思っていいんですね」。就活で体に触られるなどのセクハラに遭った学生の言葉が、心に重く残っています。「レイプ被害に比べたら私の被害なんて、と思っていた」「初めて明かす話です」。アンケートの回答からも、埋もれていた被害の多さを実感しました。嫌なことは嫌だと言える社会にするためには、「セクハラを容認しない」という各界のトップ層のリーダーシップや、自分のことも他人のことも尊重するための性教育が必要だと感じます。#MeTooと声を上げた「その先」についても、引き続き考えていきます。(三島あずさ)

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