拡大する写真・図版生後1カ月のゆまちゃん(右)と一緒に=2016年3月、富山市、渡邉さん提供

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患者を生きる 妊娠高血圧(記者の一言)

 妊娠中は、胎児に酸素や栄養を送るため、母親の血液量は1・5倍程度に増えるといわれています。通常は血管を広げるなどして体が対応しますが、動脈硬化などが原因で調整がうまくいかず、血圧が上昇してしまうことがあります。これが「妊娠高血圧」です。

 妊娠中の高血圧はあなどることはできません。そもそも母親の体には負担が掛かっています。高血圧が重なれば、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)を引き起こす大きなリスクになります。さらに問題なのは、胎児への影響です。胎盤剝離(はくり)や機能不全などのリスクが高まり、最悪の場合は胎児の死亡にもつながりかねません。

 症状が急速に進むのも妊娠高血圧の特徴です。連載に登場した富山市の渡邉広乃さんも、日常生活で血圧には十分に気を付けていたと言います。ところが、ちょっと無理を重ねたことで、あっという間に血圧が180台後半にまで上昇してしまいました。

 妊娠高血圧によって早産になってしまうと、母親は自分の責任と感じがちです。渡邉さんも、「もう少し気を付けていたら」と自分を責める気持ちになりました。

 そんな渡邉さんの救いになったのが、生まれてきた第2子の長女ゆまちゃんの生命力でした。たくさんの管につながれながら、小さな体で懸命に母乳を飲む姿を見て、「母親としてできることをやろう」と気持ちを切り替えたと言います。

拡大する写真・図版生まれたばかりの長女ゆまちゃんと対面する渡邉広乃さん(左)と家族=2016年2月、富山市、渡邉さん提供

 

 妊娠前は高血圧と縁が無いと思っていた人も、妊娠をきっかけに高血圧になるケースもあります。実は血管の老化が進んでいたのに、妊娠するまでたまたま症状が出なかった可能性があるからです。

 取材した専門家は、妊娠高血圧を通して自分の体を知り、将来の高血圧のリスクに備えるきっかけにするよう勧めています。万一、診断されたとしても悲観するだけでなく、「正しく恐れて、正しく備える」ことが大切だと感じました。

拡大する写真・図版妹のゆまちゃん(右)を抱く長男の晃広くん=2016年4月、富山市、渡邉さん提供

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<アピタル:患者を生きる・妊娠・出産>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(田之畑仁)

田之畑仁

田之畑仁(たのはた・ひとし) 朝日新聞記者

1998年朝日新聞社入社。富山支局、田園都市支局、東京本社・大阪本社科学医療部などを経て、2010年4月からアピタル編集部員。