[PR]

 マンションを地域の防災拠点として活用する動きが、首都直下地震や南海トラフ地震の被害が想定される地域を中心に広がっている。耐震化や食料などの備蓄を進め、マンション住民は「在宅避難」を前提とするとともに、地域住民や帰宅困難者、津波避難にも対応しようとする試みだ。

 都内でマンションやアパートなど共同住宅に住む世帯は全体の約7割。マンションの住民が在宅避難し、避難者や帰宅困難者らの一時的な受け入れも可能か、マンションの住民を含め、避難者らが体育館などに押し寄せるかは、行政が地域防災計画を作る上でも大きなポイントになる。

 世帯の約9割がマンションに住む東京都中央区は防災計画で、在宅避難を「基本的な方針」と掲げ、建物の耐震化と、住民による自助・共助の活動を支援すると明記。区の基準を満たした「防災対策優良マンション」に訓練経費を助成している。区のパンフレット「備えて安心! マンション防災」は、2~5階ごとに代表を選び、安否確認をする情報班や炊き出しをする物資班を置くなど災害対応の流れを示し、在宅避難を後押しする。

 隅田川に囲まれ、超高層3棟と高層1棟からなる「西ブロック地区全体管理組合」(総戸数1170戸、同区佃1丁目)は、救急箱や救助工具を備えるほか、災害対策本部となる1階には水や食料、毛布、照明器具などを置いている。

 品川区は帰宅困難者らが共用スペースを一時的に使える協定を約10カ所のマンションと結ぶ。区の担当者は「公共施設だけでは、ターミナル駅付近に集まる帰宅困難者の対応ができない」と説明する。

 28日午前、大阪市都島区のマンションで防災セミナーが開かれた。

 「生き残った後の防災を考えていますか?」。参加したのは住民約30人。在宅避難する際に必要な心構えや備蓄品を確認した。

 15階建て計約290戸。最上階を除く各階に防災倉庫が備えられ、水や乾パン、簡易トイレのほか、工具もある。屋上は約300人を収容できる広さがあり、地域住民の一時避難場所として開放することも検討している。

 市は2009年、「防災力強化マンション」を認定する制度を始めた。基準は一定以上の耐震性や耐火性に加え、救助用の資機材、食料や水の備蓄倉庫を設置することだ。在宅避難が続けられるよう、かまどベンチやマンホールトイレを設けることも選択できる基準の一つで、地域との連携についての規定もある。1月現在で48件(計約5300戸)を認定したという。

 南海トラフ地震による津波被害が予想される地域では、マンションは貴重な避難場所だ。高知市は3月末までに、津波避難ビルに指定されている市内の分譲マンション4棟に「自動解除装置付きのキーボックス」を設置する。

 市沿岸部には最短16分で1メートルの津波が到達し、高さは最大16メートルになると想定されている。

 キーボックスは、震度5弱以上の揺れを感知すると自動的に解錠され、近隣の住民らが建物内にいち早く避難できる。15年冬から市内の小中高校などで設置を進め、これまでに39施設で完了した。市の担当者は「一人でも多くの住民に速やかに避難を促すことができ、人命を守ることにつながる」と期待する。

地域との連携課題

 在宅避難で心配されるのが、独居老人や障害がある人など「災害弱者」だ。

 マンションの耐震性に問題がなく、備蓄が十分だったとしても、不安に思ったり、余震が気になる人も少なくない。体育館や公民館などの避難所は、住環境やプライバシーの問題はあるが、支援物資のほか、ボランティアや行政機関の情報が集まるといった側面もある。マンションでの在宅避難を勧める動きに対し「一律に在宅避難を強いて避難所から遠ざけるのはおかしい」との意見も出ている。

 折衷案の一つとして、日中は公的な避難所に身を寄せ、夜間はマンションに戻るといった方法も挙げられている。逆に、地域住民がマンションの避難スペースや物資を利用するケースも考えられる。

 いずれの場合も、トラブルや感情的なしこりが残る恐れはあるが、大切なのは、普段からコミュニケーションを密にすることだ。東京都大田区は、マンション住民、地域住民が一緒に取り組む防災訓練を推奨。マンション住民が避難所の運営に関わることを促す自治体もある。

マンションと地域の共助例

・集会所、ロビー、中庭などを避難スペースとして開放

・水利施設、炊事設備、トイレなどの共有

・テント、毛布、食料品などの提供

・地域の防災備蓄倉庫をマンションに置く

・津波避難ビルとして行政が指定

・マンション入居者と町内会住民の合同防災訓練

・マンション入居者が避難所運営に参加