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Round19 AI、どこまで進化するの 「庄説」

 お笑い芸人の庄司智春は今使っているスマートフォンを改めて眺めてみる。顔認証で画面ロックは解除され、音声認識で天気が分かり、音楽も流れる。技術は急速に進化して、便利になった。AIもきっとそうなる。でも、いいことばかりなのか、そこに潜む怖さもヒシヒシと感じてしまう。今回の「庄説」には、そんな複雑な思いを込めた。

     ◇

 未来の真ん中にいるみたいだ。

 加速するAIの進化を目の当たりにすると、そんな気持ちになる。

 先日、番組共演者が乗っていたテスラ・モーターズの電気自動車を拝見する機会があった。自動運転機能が付いていて、車庫から車を出すのもスマートフォンのアプリから操作が出来るのだ。

 もちろん運転席には誰も乗っていない。そして車は停止してゆっくりとドアが開く。ガルウィングのドアは両サイドの車との間隔を感知して、当たらないように自動で開き方を調整した。

 まさに未来の車を、僕は現実で見た。漫画や映画で僕らが見た未来の扉がもう開いていて、その中に入っている気がした。

 ワクワクすると同時にどこか気持ち悪さも感じた。この整理できない気持ちは、何なのだろう。

 人間の職業をAIが奪っていくのではないかという問題が心配されている。事務労働などでは現実に起きつつあるようだが、もっと多くの職業もそうなる可能性もある。

 囲碁AI「アルファ碁」や藤井聡太五段も研究に使うAI将棋ソフト「ポナンザ」はもう有名だが、お笑いでもAIが大喜利をやって笑いをとっている映像を見たことがある。

 この大喜利AIも、そこそこやるのだ。僕の大喜利の力よりははるかに上をいっていた。お笑い界にもジワジワとAIの進出がもくろまれている。小説や音楽の作品を生み出す可能性もある。

 怖い存在である。

 スポーツでも審判にAI導入が議論されている。個人的には反対だ。誤審などは起きないのかもしれないが、人間が自らを鍛えて競うものに、AIが最終的なジャッジをするのは、人間がAIに負けているように感じるからだ。

 人間の挑戦は、人間の目でジャッジして欲しいと思う。スポーツは不完全な人間が判断して、時には誤審もあるから面白く、ドラマが生まれる。そこで人間も成長出来るのではないかと思うのだ。

 一方で、人工知能と共存することで、人間の暮らしが良くなる面も多い。人工知能が内視鏡検査の画像から、がんが疑われる箇所を発見する技術は、人間に比べて見落としが減る。高齢化社会で介護の世界での活躍も期待できる。

 AIの進化で未来は明るいのか、それとも職業が失われて暗いのか、その結果を知る未来はもう近くにきている。

 進化したAIと共存できるように、人間自身も進化していかなくてはならない。すべてをAIに任せるのではなくて、人間が主導権をとってAIを操るのが良いと思う。すでに未来のど真ん中にいる研究者や専門家には、たまには未来を俯瞰(ふかん)して、より良い未来と明るい生活が訪れるようにしてもらいたい。(庄司智春)

【論説委員講評】望ましい未来への道筋、探る努力を

 光栄にも庄説に2度目のお呼びがかかりました。

 いやあ、楽しい対談でした。「未来の扉がもう開いていて、その中に入っている気がした」「ワクワクすると同時にどこか気持ち悪さも感じた」というのは、AIを取材しているボクの感想とまさに重なります。

 この対談は実は、時間の要素が抜けています。すぐにもAIの活用が始まりそうなもの(病気の画像診断など分析・解析の補助)、中期的に実現しそうなもの(完全自動運転車など)、そして実現性もわからない人間を超えるかどうかというもの(芸人AIや政治システムへの応用など)を、明確に区別せずに話題にしているからです。

 でも、多分、今必要なのは、そうした段階をわけた細かい議論よりも、イメージを膨らませ、望ましい未来への道筋を探る努力ではないでしょうか。

 シンギュラリティーの到来には懐疑的な研究者も少なくありません。ですが、大喜利AIのように大勢の研究者がさまざまな角度からAIの限界に挑んでいます。ボクはそうした人間の力を信じるからこそ、いつかは人間を超えるAIを生み出すのではないかと考えるのです。

 人間はAIをどこまで進化させ、そのAIとどんな関係を築くのでしょう。

 「進化したAIと共存できるように、人間自身も進化していかなくてはならない」という「庄説」に全面的に賛同します。

 SF作家アーサー・C・クラークは「幼年期の終わり」で、人類の進化と人類を超える存在について一つの可能性を描きました。かなうことなら、同じように人間とAIの行く末を見届けたい。半分、怖いもの見たさです。(朝日新聞論説委員・大牟田透)

◇論説委員プロフィール

 おおむた・とおる 大学はお得に6年で2学部(ただし、実用とは縁遠いと言われる理学部と文学部)を卒業し、1984年に入社。科学・医療関係を主に取材する。ワシントン特派員で9・11、東京科学医療部長で3・11を経験した。2013年から論説委員。

 ダボハゼ的というか、何でも首を突っ込みたがる知りたがり。極めて平凡な人間だと思っているのだが、近しくなると「宇宙人」などと言われることが重なり、最近、自己認識が揺らいでいる。58歳にして、深夜アニメなどを結構見ている辺り、やっぱり変なのかも知れない。

 庄説にお呼びがかかったのは2回目。AIに限らず、いろんなところで昔読んでいたSFのあれこれを思い出す時代になってきた気がする。人類の行く末を見届けたくて、ジムで健康づくりのトレーニングに励んでいる。

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