[PR]

 地質学上の時代区分に「チバニアン」の名が刻まれる可能性があることで注目を浴びる千葉県市原市田淵の地層。その斜面に、地質学者らでつくる研究団体がコンクリートブロックの階段を整備した。見学者にとっては地層を間近に見ることができる便利な階段。だが、国の天然記念物指定を目指す市は「現状変更」に困惑している。

 地層は養老川沿いに露出し、約77万年前に地球のN極とS極が逆転して今と同じ向きになったことが確認できる。国立極地研究所など日本の研究チームが昨年6月、地質時代の境界を代表する「国際標準模式地」として国際学会に申請。認められれば、マンモスやネアンデルタール人がいた約77万~12万6千年前の地質時代が、ラテン語で「千葉時代」を意味する「チバニアン」と呼ばれる。

 昨年11月には、1次審査を通過して模式地の候補に残ったことが明らかに。すると「チバニアン」という言葉が注目され、地層にも見学者が殺到した。斜面を登る足場がぬかるむなどしたため、市は昨年12月、安全面を理由に斜面への立ち入りを禁止。見学者は地層を間近に見ることができなくなった。

 市などによると、斜面にコンクリートブロックを積み重ねた階段がつくられたのは今年1月中旬。整備したのは地質学者らでつくる研究団体「古関東深海盆ジオパーク認証推進協議会」(香取市)で、地層について解説する看板もいくつか設置した。「チバニアン」を国際学会に申請した研究チームとは別の団体で、この地層について長年、研究活動を続けてきたという。

 協議会会長の楡井久・茨城大学名誉教授は朝日新聞の取材に「事故があっては大変。私たちはすべてボランティアでやっている」と話す。地層の一帯は公共用地と民有地が混在。楡井名誉教授は、階段を整備したところは民有地で、所有者の協力は得られていると説明している。

 一方、市の担当者は「天然記念物の指定後に、見学者への環境整備をしたいと考えている。だが、先行されてしまっては何もできない」と戸惑いを隠さない。

 市は1月末、地層を国の天然記念物に指定するよう求める意見具申書を県を通じて国に提出。指定により保存・保護と研究活用の両立を図りたい考えで、学識経験者らでつくる検討委員会でルールづくりを検討している。その矢先の「現状変更」に、別の担当者は「天然記念物の指定に向け、心証が悪くなるのではないか」と懸念する。

 国際学会は早ければ今年中に国際標準模式地として認めるかどうかを決定するとみられるが、市は、それより前に国の天然記念物に指定されることを目指している。(石平道典)